2021年3月16日(火)

▼伊賀市のパートナーシップ制度が知事会見で話題になったとき、鈴木英敬知事は要綱で定めた伊賀市と対比する形で条例で制定した先行例の渋谷区を高く評価した。「申請はしてみたけども実は、ということがないように」などと言っている

▼県議会常任委員会で、県は性的少数者(LGBT等)のカップルを公的に認める「パートナーシップ制度」の要綱案を示した。変われば変わるもの。もともと「住民登録とか市区町村の仕事」だと、県での対応自体に否定的だった。「ダイバーシティみえ推進方針」策定などを経て昨年、本人の了解を得ずに性的指向などを暴露する「アウティング」禁止を柱とする条例案制定へ踏み込んだ

▼昨年11月の議会提案説明で、パートナーシップ制度を条例に含むことを明言。1カ月後の記者会見で撤回した。「思いはまったく変わってません」「方向性は全く変わるところはありません」。変えたのは効果を含めて一段低く見ていた要綱の評価だけということか

▼知事自身、変節流転したと言われることにおかんむりだ。「いろんな意見を聞く中で、こうしたほうがいいと思うことが出てくる。(変節流転批判はそれが)できないということになる」。それはそれとして、否定的だった平成28年から5年の歳月はともかく、県議会表明から1カ月の撤回は、ついていく方が大変ではある

▼議会などと対立することばかりが政治信条を実現する戦術とはいえまい。柔軟な対応も、政治家の資質の一つだが、それが巧みか拙いかで、名将か謀将かの評価が分かれるのは歴史が語っている。