<まる見えリポート>鈴鹿市のコロナ感染防止策 在宅勤務進まず 三重

【証明書の発行で来庁する市民に対応する窓口=鈴鹿市役所で】

三重県鈴鹿市が新型コロナウイルス感染拡大防止のため、市の正規職員1432人を対象に、自宅での在宅勤務を試行的に実施している。1月25日から始まり、約1カ月経過したが、取得率は3・5%と低い。人事課の江藤大輔課長(53)は「試行期間終了後、改めて全体的な状況や傾向を検証していく」と話すが、新年度中の本格運用実施に向けての課題は多い。

在宅勤務の実施は、「万一職員が感染した場合、業務継続に多大な影響を及ぼす」と、県の新型コロナウイルス緊急警戒宣言を受けてスタート。当初は宣言期間の2月7日までの実施を予定していたが、同宣言の延長に伴い、現在も継続している。

市の文書管理規定では公文書の持ち出し禁止のため、自宅勤務では個人情報を取り扱う業務は認められない。そのため、業務に関連する書籍や報告書を読んだり、他市の事例を調べるなど、できる仕事の範囲が限定されることから、各部署で自宅でできる業務を精査し、協力できる部署が申請する。

スタート前、人事課では「目標値の設定は難しいが、5月から始めた時差出勤制度と合わせて5割くらいいければ」と見込んでいたが、時差出勤制度の取得率も現在は1割程度と減少傾向にあり、思うようには伸びなかった。

24日現在の在宅勤務状況は、104部署のうち23部署で、50人が延べ79日取得した。

政策経営部総合政策課では、10人中8人が計8日取得した。澤卓男課長(54)は「素案をまとめるなど、時期的に作業内容が在宅勤務に合致したため、取得しやすい環境だった」と話す。

同課政策創造グループの堀田知希さん(28)は現在、新型コロナ臨時交付金の事務取扱について担当する。期間中は1日間取得し、国の説明会をインターネット動画で視聴したほか、SDGsのセミナーの動画も視聴したという。「庁内のパソコンやインターネットを使用できないため、できる仕事が制限されてしまうのはやりづらい」と話す。

同部行政経営課公共施設マネージメントグループの渡邉賢さん(39)は、来年度の公共施設と総合官営計画の改定作業を担当する。今回はおよそ週1間隔で、2日間取得した。「他市の事例や国の施策確認など、電話や内線、打ち合わせなどで作業が中断することなく、自分のペースで作業に集中することができた」と話す一方、「小さい子どもが3人いるので、幼稚園や保育園から家に帰ってくると、逆に集中できないこともあった」と振り返る。

一方、1人も実施できなかった81部署は、窓口業務や個人情報を扱う仕事が中心で、在宅勤務へのハードルは高い。

戸籍住民課の永戸輝英課長(52)は「多くて1日500件くらいの証明書を発行している。コンビニやオンラインでの証明書発行もあるが、サポートが必要な人も多く、対面でしか難しい仕事。扱う書類は個人情報の塊なので、在宅勤務は不可能」と話す。

環境整備の一環として、新年度に向けて、同市議会12月定例議会で可決された補正予算で、在宅用ノートパソコン80台の購入を進める。

セキュリティ対策を万全に施し、個人情報ではないデータを移し込み、自宅での作業に使用する計画という。事業費は1326万3千円で、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を充てる。

江藤課長は「市役所は市民との対話の場所でもあり、闇雲に取得率の数値を上げればいいというわけではないが、柔軟に対応できるよう環境整備は進めていく」と話した。