2021年1月1日(金)

▼十干十二支は古代中国で始まった数の単位で、暦法と結びつき、十二支を動物に充てたことから、身近な指針となった。1年を12等分して植物の生成ともなぞらえたため、ねずみ年にタネをまき、うし年で成育することになり、万事縁起がいい

▼12年前のうし年は9月に民主党政権が誕生し、国民は期待で高揚し、内閣支持率は70%を超えた。安倍晋三前首相は「悪夢のような」と言う。評価は定まらない。コロナ禍の中で迎えたうし年が、どんなに明るい年を予言しても、例年のような「明けまして」という気分にはなれない

▼牛はまたヒンズー教では聖獣とされ、仏教でも神の使いとされる。古くは旧石器時代の洞窟壁画に描かれ、狩猟対象であるとともに信仰の対象として人類との関係は長い。日本への渡来も古く縄文時代とされるが、農耕用に使役されるのは弥生時代以降で、平安時代は牛車として貴族の乗り物として高貴の象徴だった

▼「牛に引かれて善光寺参り」はそうした伝承とともに伝わる。布を角に引っかけた隣家の牛を善光寺まで追って仏縁に触れる老婆の話が由来。今昔物語には中国の説話として、やはり牛に寺に導かれた老婆が死後天上界に生まれ変わった話を紹介している

▼大宰府に流された菅原道真の怒りを鎮めるため各地に建立された天満宮には牛の像が置かれている。暗殺から救ったとの伝説に基づくが、受験シーズンの苦しい時の神頼みの神社としても知られる。景気の悪いときほど初詣の客は多いという日本で、今年はそんなこともままならぬ初めての年明けとなるのかもしれない。