2020年11月21日(土)

▼熊本県の蒲島郁夫知事が川辺川ダム建設を容認し、「ダムなし治水」からの方針転換を表明した。八ッ場ダムに続く建設再開で、民主党政権が掲げた「コンクリートから人へ」の12年の夢から覚める、と言ったら、岡田克也元副総理がまた何か言うかもしれない

▼7月の九州豪雨で球磨川が氾濫し65人の犠牲者を出し、人災の批判もあった。気象庁の予想降雨量の甘さや避難勧告の遅れ、バックウオーター対策、特別老人ホームの防災計画などだが、川辺川ダム建設再開の声で、すべてが押し流された感がある。振り返るより二度と起きない対策を優先すべきだという暗黙の合意だろう

▼その意味で、見事だったのはやはり国土交通省か。国の検証委員会は被害の原因ではなく「川辺川ダム、もしありせば」という仮定の命題に言及し「浸水面積が約6割減らせた」「ダムなし案では4割」などと発表。「ダムがあっても球磨川の氾濫は避けられなかった」などとしながらも、実質ダム建設へ世論を導く役割を果たした

▼蒲島知事は「被害の責任は重大」と語ったが、ダム容認を表明した議会では「(建設が)認められなければ責任を取る」。責任の中身が変わっている気がするが、多くの防災責任者にとって救われる変化ではないか

▼川辺川ダム白紙では、遊水池など自然環境を生かした対策が代替案として提示されたが、経費増大で停止されたままだった。「環境にやさしい」施策はコストがかかり、流水型でお茶を濁すらしい。現実の災害に机上の策がどこまで通じるか

▼川上ダムの経緯と一部重なるのが心配だ。