2020年11月12日(木)

▼伊勢市駅前再開発ビルへ入居予定の市保健福祉拠点の費用総額について、市は議会教育民生・産業建設連合審査会で、年間約200万円を引き下げるとの開発業者の条件を「要求の範囲内」として受け入れる方針を示した

▼分かりにくい問題だった。旧三交百貨店跡地で建設が進む複合ビルで、キーテナントだった高齢者住宅が新型コロナの影響で撤退。しわ寄せで、開発業者が保健福祉拠点を入居させる予定の市に、新たに一時金12億円と階高変更等工事費の精算6千万円の負担を求めてきた。市はもちろん、議会が反発するのは当然。にもかかわらず、市は保留床売却案を業者に提示するなど、資金繰り改善に協力する姿勢を見せた

▼「そもそもなぜ駅前に福祉拠点が必要なのか」というのは本紙が8月に提示した疑問。市は現施設の手狭感や駅前の利便性に加え「自前施設より割安感」をあげるが、再開発事業の不安定さは津市などでも実証済み。いずれもキーテナントの撤退を機に資金繰りが悪化。市施設の大量入居でほころびを繕っている

▼伊勢市の場合、逆に先に市施設の入居を決め、階高増加の注文までしている。要望に応え「福祉拠点以外の使い道はない」と業者。当然関係は深まろう。追加負担を巡り、市と業者との取引疑惑が議会から指摘されたというが、民間同士ならあまり聞かない経緯ではある

▼参考人招致された業者はコロナの責任大とし「万一入ってもらえなかったら金融機関にも見放される」。市の担当部長は「現時点で入居以外の手段は全く検討していない」。入居ありき、だったのだろう。