2020年11月7日(土)

▼一葉落ちて天下の秋を知る―わずかな変化で大事を察知する、の意だが、そんな先見の明というより、単純に秋がきたなあと思ったのは、三重県土整備部の若手職員らが将来の公共インフラについての提言をまとめた報道を見た感慨だ

▼「多様な価値を持たせる」など十年先のビジョンに対してではない。「若手職員ら」というメンバーが20代後半から40代前半。代表は44歳で階級は主査という。係長級ということか

▼30年ほど前は、40代前半といえば課長昇進組も現れた。一葉落ちて―」は衰亡の予知にも使われるが、県の判断機構の老衰化をちょっと連想させられたのである

▼若手職員の提言は北川県政でも職員の意識改革の一環として大々的に始められた。ご多分にもれず伝統にはならなかった。今回は国土交通省道路局から着任した県土整備部長の案で「職員に広い視野を持ってもらう」狙い

▼「今後も広い道路空間は必要か」など問題提起し、「社会を支える」から「新たな価値を持つ」に転換。多目的に活用する「フィールド」として捉えたという。小泉内閣の「聖域なき構造改革」も連想するのである

▼道路関連予算の大幅削減に危機感を持った国交省は、全国の出先を総動員し、地域の女性団体など各層ごとに「道路懇談会」を組織し、道路のあり方や将来など自由活発な意見を踏まえ、道路の必要をまとめていった。逆境の中で道路予算を確保していくたくましさ舌を巻いたものだ

▼その精神は県の中に植え付けられていくのだろう。新任部長は48歳。柔軟な頭脳が実践として存分に振るえる。