2020年10月19日(月)

▼菅義偉首相が押印廃止を指示した途端、鈴木英敬知事が「押印は原則廃止」を県議会で表明した。打てば響く。呼吸がぴったりで気持ちいい。日ごろ足しげく上京して情報収集し、県にいても国の動きに目をこらしてきた成果と見える

▼知事としてはスマート改革の一環で、コロナ禍で急に加速した国よりずっと足に地がついていると言いたいところかもしれない。古くからお役所仕事の課題とされた「脱はんこ」を打ち出さなかったことにちょっぴり残念がっているかもしれない

▼県の「はんこ行政」のいい加減さが如実に表れたのはカラ出張の発覚だろう。行政手続きの誤りを正す役の県監査委員会が、出張申請の書類や許可印を臨時職員任せにし、阪神大震災の全交通遮断の中を同委職員が九州に出張していた矛盾した記録が残っていた。カラ出張発覚の端緒である

▼臨時職員がパソコンで契約書式を引き出して公印管理の職員に押印させ、民間企業と委託契約を結んだ津県民局での架空契約事件や今年3月、埋蔵文化財センターの技師が2年にわたり、上司らの机の中から無断で印鑑を取り出し、押していた事件もあった

▼いずれも、押印という手続きがなかったらもっとひどいことになっていたことをうかがわせた。「はんこ行政」は面倒くさがってぞんざいに扱う押す側の問題で、不正する側にはかなり高いハードルになっている

▼デジタルで「はんこ」の役割が代替できるかどうか。デジタルに置き換えられる仕事とそうでない仕事をまず探るべきだろう。始めから原則廃止などと意気込む必要性はむろんない。