2020年7月8日(水)

▼鈴木英敬知事が局地的な豪雨をもたらす「線状降水帯」が県内で発生した場合に備え、津地方気象台など関係機関と体制を調整するよう指示したという。その一方で「昨年、県内で河川が氾濫したときも線状降水帯だった」。災害に対し、迅速に対応しているのか、のんきに構えているのか、頭がくらくらしてくる

▼昨年の河川の氾濫とは、10月11―13日にかけて県内を襲った台風19号から5日後に県南部で起きた集中豪雨のことか。記録的大雨に見舞われて尾鷲市の沓川が氾濫。周辺の住宅地から志摩市、熊野市まで、床上、床下浸水の被害がでたが、県の警戒情報は台風19号までだった記憶がある。不意を突かれたという印象だ

▼あるいは、その前月の9月の集中豪雨で護岸のコンクリートが崩れ落ちた菰野町の杉谷川のことか。氾濫と呼べるのはやはり沓川だろうが、「線状降水帯」が原因とは知らなかった。初めての発表ではないか。10月25日の記者会見で知事は台風や集中豪雨の被害状況を語ったが、河川氾濫については触れていない

▼ハザードマップの活用に懸念を示し、事例としてあげたのは杉谷川だった。県のホームページでは台風19号の被災状況が探せない。19号関連では県職員、民間の全国へのボランティア派遣、募集と、募金への呼びかけがあふれている。県内被災の早期復旧、支援を語るが、形に表れているのは二の次だ

▼九州南部で「線状降水帯」が大災害を引き起こしたのを見て、急ぎ体制の調整を指示し、実は昨年県でも発生していまして―。何だかおとぎの県のような気がしてくる。