2020年7月7日(火)

▼大雨特別警報が出されてから避難するのでは遅いのだそうだ。6日、記者会見した気象庁の担当官は、それ以前の市町村の情報に基づいて行動すべきという。4日の熊本豪雨で、またも高齢者施設の14人が犠牲になっていた

▼実際、特別警報が発令されたのは4日午前5時前。球磨村の避難指示はその1時間ほど前の同3時半。同5時過ぎ、自力歩行できない高齢者たちを2階に運ぶ作業に入ったが、エレベーターもなく、手間取る間に濁流が押し寄せ、1階を水没させた

▼暴れ川の異名を持つ球磨川の支流に近い施設として、避難訓練を年2回実施するなど、普段から防災意識は高かったという。避難計画も策定していた。村もタイムライン(事前防災行動計画)を導入。3日午後4時には国や気象台、周辺自治体らとタイムライン運用会議を開き、その1時間後、高齢者等避難開始を意味する避難準備情報を発令している

▼しかし、深夜1時過ぎからの急激な雨量の増加は気象台も予想外で、警報までは予測していなかったという。自治体も、天候の激しい変化に、避難指示のタイミングがつかめなかった。施設職員も、これほどとはと絶句する

▼対策の基準が戦後最大の昭和40年洪水のデータで、百年に一度といわれる災害が相次ぐ近年を想像できていたかどうか。本川である球磨川の水位上昇で支流がせき止められるバックウオーター現象が堤防を決壊させたことも2年前の西日本豪雨を思わせる

▼マニュアル整備と想像力駆使、現実への対応能力のどれが欠けても被害を拡大させる。教訓にしなければならない。