2020年5月12日(火)

▼2、3紙見た範囲だが、検察庁法改正案審議入りの記事の扱いは各紙とも大きくなかった。強引な法解釈がまたも正当化されるのかと憂うつだったが、ネットに抗議の投稿が相次いでいるという。効果のほどは知らないが、やや気持ちが晴れる思いがする

▼森友・加計問題に続く桜の会の安倍晋三首相の答弁にはへきえきしたが、加えて今回は、まるで人ごとのような検察庁の沈黙ぶりにもあきれた。一部に声が上がったの報道もあるが、庁全体として受け入れる姿勢が政権を勢いづかせるのだろう

▼各界の検証委員会などの長にOBが就いてもっともらしさを演出するが、彼らも何も言わない。かつて東京佐川急便事件に連なる金丸信・自民党副総裁を事情聴取せずに上申書で略式起訴し、検察庁の看板に何者かがペンキを投げつけられた。覚えのある人ばかりである

▼仕事柄忘れられないのは、伊藤栄樹検察総長が退官後出版した手記。政敵を追い落とそうとガセネタを渡したことを悪びれず書いている。あおりを食って誤報を書いた新聞記者が命を縮めている。手段を選ばずは村木厚子さんの郵便不正事件ばかりではない

▼藤波孝生元官房長官のリクルート事件もそうだし、関係した鈴鹿市長に対する名誉棄損罪で起訴された民族団体代表の事件でも、事実と信じる事情の立証寸前、検察は単なる侮辱罪に訴因変更し、市政の問題を町のけんか並みにしてしまった。「巨悪を眠らせない」の検察の理念は伊藤栄樹の訓示からと言われる

▼輝ける検察へ―を伊藤も後輩らも目指している。国民はカヤの外なのかもしれない。