<まる見えリポート>酒のテイクアウト広がる 新型ウイルス禍のバーや居酒屋

【テイクアウト専用の純米吟醸酒「天慶」を販売する福田さん(左)=四日市市西浦一丁目のバー「ダブル・ファンタジー」で】

新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店の客足が遠のく中、バーや居酒屋などで酒のテイクアウトを始める動きが広がっている。飲食店での酒の小売りは基本的に禁止されていたが、国は救済措置として今月9日付で「期限付酒類小売業免許」を設けた。

16日から酒のテイクアウトを始めた近鉄四日市駅近くのバー「ダブル・ファンタジー」。マスターの福田浩一さん(58)は感染予防のため、営業形態をテイクアウトに切り替えた。「終息が見えない中、今はこのスタイルでやるしかない」と話す。

店内には北勢地域の地酒や和製クラフトジンなど、福田さんが厳選したこだわりの酒が並ぶ。コウヤマキの葉や温州みかんの皮などを使った和製クラフトジン「KOZUE」を用いたジントニックは、テイクアウトで注文する人がいるほどの人気ぶりだ。

テイクアウト用の新商品も。早川酒造部(川越町)の純米吟醸酒「天慶」を四合瓶とワンカップで販売している。福田さんお手製のラベルには「Roll Over COVID―19 新型コロナをぶっとばせ」の文字を入れた。

「殴り書きをそのままラベルにした特別限定酒」と笑う福田さん。鬱々(うつうつ)とする日々が続く中「少しでも世の中を明るくしたい」という思いを込め、ビートルズもカバーしたチャック・ベリーの代表作「ロール・オーバー・ベートーヴェン」から引用したという。

店では軽食やツマミのテイクアウトもしている。県外にいる客の中には情勢を考慮して来店を控えるが「ツマミや酒を適当に選んで送ってくれ」と郵送を希望する人もいるという。福田さんは「ありがたい話。滑り出しはぼちぼち」と話すが、4月の収益は前年と比べ半減する見込み。「今はお客さんに『また来てください』と言いづらい状況。やれることをやるしかない」と前を向く。

津税務署によると、期限付酒類小売業免許の申請締切は6月30日。販売期間は免許付与から6カ月となっている。酒類販売の許認可を担当する国税庁の発表を受け、県内でも同免許を申請する動きが広がっているという。

申請窓口は四日市や伊勢などの各税務署だが、酒税の担当者がいるのは津税務署だけ。同税務署の担当者は「具体的な申請数は言えないが、多くの方が望まれている。税務署としても手続きの簡素化や迅速化に取り組んでいる」と話した。