<まる見えリポート>県庁は人事の季節 副知事、教育長ら退任

三重県庁は人事の季節を迎えた。本年度は渡邉信一郎副知事(66)、廣田恵子教育長(62)が任期満了を迎えるほか、服部浩危機管理統括監はじめ部長級職員10人が60歳定年を迎え、来年度は大がかりな異動が予想される。さらに今年中の解散総選挙が取りざたされ、鈴木英敬知事の去就も注目される中、どのような布陣とするのか。令和2年度幹部人事を展望する。(年齢は3月31日現在)

ほかに60歳定年を迎えるのは、福井敏人医療保健部長▽井戸畑真之環境生活部長▽中川和也同部廃棄物対策局長▽伊藤久美子地域連携部南部地域活性化局長▽村上亘雇用経済部長▽渡辺克己県土整備部長▽山神秀次企業庁長▽水島徹監査委員事務局長▽信田信行四日市港管理組合経営企画部長。

渡辺副知事の後は、服部氏が3年前に現職に抜擢された時点で「後任含み」と捉えられてきた。服部氏は県庁の物差しで測れば実力は十分。ただ、国体などの資金集めに石垣英一元副知事が暗躍し、いまだ影響力を発揮しているとささやかれる中で、どこまで存在感を示すことができるか。

鈴木知事の注目人事といえば、幹部職員への積極的な女性登用。そのトップランナーが廣田氏で、常に「女性初」の最前線に立ってきた。残すは「初の女性副知事」のみだが、廣田氏は今期で退任の意向が固いという。早晩いつか誰かはこの称号を得る。ならば、知事の女性登用の〝総仕上げ〟として、道を切り開いてきた廣田氏こそ適任か。

教育長は福永和伸戦略企画部長(59)が有力視。企画畑のエースと見られるが亀山高校長の経歴を持ち、とどのつまり教育長に据える布石だったのではとの声。副教育長経験者の木平芳定東京事務所長(59)の名も上がる。服部氏が、副知事がなければ教育長登用もありうるとの見方も。

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服部氏の後任は福永氏や日沖正人防災対策部長(58)の名前が。大穴狙いとして、コンプライアンス総括監も兼ねる喜多正幸総務部副部長(58)の大抜擢を読む向きもある。喜多氏は人事課長や秘書課長、県土整備部副部長など重要どころを歴任し、昇格組の筆頭候補。「一見、身のこなしや考え方もスマートな『シュッとした人』だが、陰では苦労人」との庁内評で〝スマート危機管理〟に期待。高校時代から知る同僚によると、当時からモテまくり、入庁時にはそのルックスに女性職員が大騒ぎしたという。そんな喜多氏は登用先の見立ても引く手あまたで、防災部長や戦略企画部長、雇用経済部長で名前が上がる。

今回、副知事を国など庁外登用に戻す意見や、防災対策部との被りが指摘される危機管理統括監の存廃も話題に。いずれも知事のこだわりで始まったもので、逆にこれらが方向転換となれば見どころ。いよいよ鈴木知事が閉店準備に入ったと見られる。

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福永氏が異動した場合の戦略企画部長には、岡村順子環境生活部副部長(58)の声。岡村氏は県総合博物館の功労者で、バランス感覚に優れた手腕の持ち主という。昇格が確実視される一人のため、環境生活部長、子ども・福祉部長、南部活性化局長に名が上がるが、女性登用に熱心な鈴木知事のこと。エース級が就任するとされる企画部トップへの女性初登用もありそうか。

環境生活部長には森靖洋子ども・福祉部副部長(58)の名前が上がる。森氏は六歳と四歳の女の子の父親。「子どもが成人したとき、いったいいくつになるんや」と年配者から心配の声も出るが無用。すでに育休を二度取得し、家庭内では料理担当で手作り弁当を妻に持たせるイクメン職員でもある。仕事面では「58歳組の中でも随一の切れ者」(県幹部)という抜群の処理能力で、仕事と育児の両立をこなす。子ども・福祉部長の声もあるが、いずれにしろ鈴木知事をもしのぐ「イクメン部長」として活躍に期待がかかる。

医療保健部長には、医療行政の専門家と称される加太竜一同副部長(58)がそのまま昇格か。かつての健康福祉部を引き継いだ重量級ポストとして、部長級の横滑りの位置づけを残すのなら、残り一年だが大橋範秀子ども・福祉部長(59)、荒木敏之出納局長(59)の名が上がる。

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今回の人事で、最も分かりにくいと目されているのが村上氏後任の雇用経済部長。というのも、前述の医療保健部長や戦略企画部長しかり、昇格組が登用される初任ポストと違い、部長経験者が就く重量級ポストと見なされてきた。ところが、現部長で残り二年以上の適齢者は日沖氏と辻日出夫スポーツ推進局長(58)の二人のみで、部長級の高齢化が著しい。適材適所ならば問題ないが、内実は天下り(再就職)先ポストの交通整理のため、定年延長などを連発してきたつけが回ってきたよう。

雇用経済部長にぴたりとはまる横異動はなし。そんな中で、現副部長の安井晃氏(57)と元副部長の横田浩一戦略企画部副部長(58)の名が上がる。「横ちゃん」と呼ばれる横田氏はもともと財政畑のエースとして知られ、真面目で穏やかな性格との評。仕事はできるが、例えば飲み会幹事では居酒屋のチョイスが微妙なのだという。民間企業との付き合いでは、ビールの銘柄まで配慮しなければいけないご時世に、気を利かせた対応ができるか。監査委員事務局長で登用の声もある。

一方、安井氏は企業誘致課長なども務め、民間との付き合いはいいという。山川進元部長の薫陶を受け、荒波をくぐり抜けてきた一人。ただしトップとして部を統率できるかがカギ。

部長級の高齢化の波をせき止める一手として、大胆な若返り策も講じてみるべき。そこで、空飛ぶクルマなど知事のアイデアの具現化に走る増田行信同部次長(ポストサミット・国際戦略担当)=(56)もあり。

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県土整備部長は既定ルートの踏襲ならば真弓明光同副部長(58)で決まり。同じく廃対局長も次長からの縦異動なら岩崎浩也同局次長(58)。が、岩崎氏は事務系職員。この2カ所は技術系ポストだが、その一角が明け渡されるか。

企業庁長は中嶋中関西事務所長(58)か。中嶋氏は技術系職員にも人脈があり、適役との声。RDF発電事業が終了し、事業規模が縮小される同庁の舵取りに向け、方向感が試される。南部活性化局長は中山恵里子子ども・福祉部次長(58)か。中山氏は市町経験はないが、少子化対策を手がけ、広報課長、知事室次長など対外的な仕事もこなしてきた。

四港経営企画部長は高間伸夫総務部副部長(57)が有力。「顔は怖い」が「親分肌」(いずれも庁内の声)の豪快な人柄という。財政担当らしく細かいチェックはするが、大局的な判断もできるとかで、次の総務部長が濃厚。

昇格組ではほかに坂三雅人地連部副部長(57)らの名前が上がる。

退職部長が就く特別職の四港副管理者の水谷一秀元地連部長が(65)が今期で退任。後任は嶋田宜浩元総務部長(61)か鈴木伸幸元地連部長(61)が就任見通し。