2020年1月17日(金)

▼全国紙記者の武勇伝を聞かされたことがある。他県での話だが、高校の不正入学問題を取材して県教委事務局に忍び込み、証拠書類を入手したそうだ。不法侵入や窃盗罪で逮捕されたが、県民の喝采を浴び、不起訴処分になったという

▼旧大蔵省のトイレに閉じこもり、気の緩んだ官僚らの会話から特ダネを連発した猛者がいたと谷村裕・元大蔵事務次官が著書に書いている。好意的だったが、業界紙にいたころ、会議室の植木にテープレコーダーを仕込んで問題になった全国紙記者がいた。似たような話が新聞に載り、取材倫理が問われた

▼体を張って対象に近づく場合は「果敢な記者魂」などと評され、テープレコーダーや盗聴器を使うとあざとい、ずる賢いやり口と嫌悪される。理屈上の違いは分からなかったが、それが世間だと体験的に理解してきた

▼ネット社会になってぐらつく。飛び交う情報は玉石混交というが、何でもありというのでもないらしい。議会の請願に対する共産党県議の姿勢を批判したフェイスブックへの投稿に、当の県議側が反論したら「政党がこのようなことを個人のページに書き込むのか」と抗議され、県議側は「不適切なコメントがありましたので、削除しておわびします」と陳謝した

▼訪問あるいは電話だったらどうだったか。共産党県議には電話でよく抗議され、来社されたこともある。情報を発信する側として当然と受け止めていたが、誰もが情報を発信できるようになり、ルールは別ということか

▼世間が情報の受け手一色だった時代は、思えば分かりやすかったのかもしれない。