2019年12月30日(月)

▼紀北町職員組合の共済掛け金などを横領していたとして担当の係長を停職6月の懲戒処分にし、尾上壽一町長は「町民の皆様の信頼を著しく損なった」と陳謝した。ごめんなさいということだろうが、それだけで信頼回復についてはあまり考えないようだ

▼組合の通帳を管理していたのが町の財政部長ら4人。組合内で横領が発覚したのが平成27年度。町への報告が今年10月29日。処分発表が12月26日。あきれるほどゆったりと、十分な時間が過ぎてきたというのに再発防止策などを「町民の皆様」に示していない。来年以降か、限りなく先の話か

▼財政部長らの管理責任も、何の発表もない。明らかになっていない金額がまだあるから「全部明らかにしてほしい」という被害者の疑念に応えてからのつもりか、不問ということか。地方公共団体など公的機関が不祥事を起こす体制には定番がある。紀北町でも長年見過ごされてきた

▼共済掛け金やその還付金の取り扱いという一般行政とやや毛色の違う、専門性が高い部門の担当に平成14年から28年まで14年間、異動なしで固定されてきたことだ。自身の規範に甘くなるのは、魔が差すや絶対的権力は絶対に腐敗するなどの言葉を持ち出すまでもあるまい

▼発覚分以前の横領の有無など全容解明について町は「調査機関ではないので組合の内部を調べることはできない」とも語っている。調査データなしで行政の遂行や処分ができるものかどうかはともかく、問われるのは自治体の性格ではない。失われた信頼回復のためにどんな方策をとるかである。