2019年11月25日(月)

▼県民の心に代替わりを実感させる「親謁の儀」を終え、天皇、皇后両陛下が離県された。心配された天候だが、儀式のたびに「ご神慮(神のみこころ)」(神宮支庁広報室)とも表すべき風情となり「神々しいとはこういうことを言うのか」(鈴木英敬知事)という2泊3日だった

▼最高の平安絵巻が繰り広げられた。進行にさまざまな議論があったとはいえ、日本が世界に誇る象徴としての継承が国民の共感、理解のもとに悠久に続くことを願わずにはいられない。そのためにも皇位継承の問題の解決が望まれる

▼上皇さまのお言葉に始まった生前退位からの一連の即位の行事である。お言葉には一部に憲法上の疑義を問う声もあり、最小限の国事行為のみ執り行うなどの解釈もある中で、国民の大多数が支持したのは、皇室と国民のこれからの関係がどうあるべきかを示したと言えなくはない。同時に、生身の体で象徴としてのお立場を維持することの難しさ、矛盾を感じさせたのではないか

▼共同通信の世論調査は女性天皇に8割、女系天皇に7割が賛成している。政府は来春以降に検討するという方向とされる。小泉内閣の有識者会議報告から14年。悠仁さま誕生で危機感は一気に去ったが、退位特例法が「退位後速やかに」と促した。それから3年である

▼「国論を二分する」懸念が政府を尻込みさせているというが、議論なき取りまとめは皇室と国民の関係に禍根を残しかねない。伝統を維持し、あるいは時代の変革を取り入れ、悠久の象徴制を築くには、十分な時間をかけて幅広い議論を通じていくしかない。