2019年11月1日(金)

▼「仏作って魂入れず」は、仏像を作っても魂を入れなければ単なる木や石と同じ、から転じて形だけは立派でも何か肝心なものが欠けている例え。県の誇る犯罪被害者等支援条例に基づく見舞金制度が機能せず、45件の想定に申請2件という実態にこの例えが浮かんだ

▼「申請を促しても断る被害者もいる」という。県は「制度の周知に努める方針」というから、仏像と魂がますます離れていく気がしないか

▼「見舞い」は「災難をうけたり、病気に罹ったりした人を訪れ、または手紙で問い慰め、または品物などを送ること。また、その手紙や品物」(広辞苑)。「制度」とは水と油のような言葉だが、違和感がないのは公金を使用することになる行政など限られた場合だけだという感覚に、県などはマヒしてしまっているに違いない

▼制度の適用はまず支援対象者の申請で始まる。「見舞金(遺族見舞金)給付申請書」があり「犯罪被害申告書」があり、そして「受給代表者決定申出書」がある。自分が遺族の代表で見舞金を受け取る資格者に相違なし。もし別の資格者が現れたらすみやかに返還します、という誓約書だ

▼補助金交付の申請書と基本的に変わりない。犯罪被害者等支援条例は「心無い言動」などで「精神的な苦痛」を与える二次被害を厳にいましめているが、申請・申告・申出書が苦痛を喚起することにもなりかねないのではないか

▼行政の問題点とされる手続きの複雑さは「見舞金制度」にも表れている。簡略化で本来の姿に戻すのではなく、警察ネットの活用で制度を促進するという。いやはや。