2019年10月28日(月)

▼豚コレラワクチンの接種が始まった。豚に表情はあるか。何が起きているのか分からぬあどけない顔つきに見える。あのどう猛なイノシシに見かけ以上に近縁で、豚コレラ感染による命の危険が迫っていることなど、むろん知るはずもあるまい

▼豚コレラが野生イノシシから感染したことは疑いのない事実とされる。が、感染経路が解明されたわけではない。理屈は自明でも実証はされていないということだろう。見えないところで予想もできぬ動きがあるのが自然の摂理でもある

▼野生イノシシの対策の遅れが、今日を招いた根源的理由とも言えるのだろう。猟友会の高齢化、人手不足など、問題点が豚コレラ発生で改めて問題として表面化した。県は2千頭捕獲の手段としてICT活用など、新技術の採用に迫られている。北勢で手いっぱい。南部で猛威を振るう野生イノシシ対策など、当面気づこうとしないに違いない

▼太陽光など再生エネルギー開発の抑制条例を制定した志摩市で今もしばしば太陽光施設建設のための用地買収を募集する県外業者のチラシが新聞にはさまれてくる。山林、遊休地、そして農地も対象。鈴木英敬知事が促す農地転用の手続き簡略化、旗を振った再生エネルギーへの勢いが、とどまることなく住民生活を侵食する

▼常態化している野生イノシシの住宅周辺での横行と関係はないか。アルジェリアのオラン市を恐怖に陥れたペストが多数の死者を出してこつぜんと収まる。理由は不明。次の流行へ、人の気づかぬところでじっと身を潜め、見つめているというカミュの小説『ペスト』を思う。