2019年9月22日(日)

▼江藤拓農林水産相が豚コレラ対策としてワクチン接種を認める方針を発表したのと、鈴木英敬知事ら八県の知事らが同相にワクチン接種の要望書を提出した日が同日であることの関係は分からない。が、接種に慎重だった国が方針を切り替えたのは、一大産地の関東に感染が飛び火したためであることは間違いあるまい

▼いち早く接種を求め、国の施策はほぼ評価する鈴木知事がその得点を誇るどころか、予防ワクチン枠を新設して接種の判断は各県に委ねる国の方針に対し「国の権限による緊急ワクチン接種の要件に該当する。国の責任でしっかりやってほしい」とし、スピード感を強調するなど、珍しく国の方針転換に反発している

▼地域限定を名目に感染地域を切り捨てようとしていると、国の意図を感じたからではないか。東京都のディーゼル車規制から数年後、石原慎太郎都知事(当時)の講演を聞いたことがある。ディーゼル車メーカーはフル稼働で厳しい基準をクリアしたが、バスなどディーゼル車運用会社は旧基準車両を中部や関西方面へ配備していったという

▼「西日本の人々には気の毒だったが、私がどうこう言う立場ではないので」ととぼけたことを言っていた。国が注意を促したり、西日本の自治体が抗議した事実はない。私企業の運用方針などは誰も気にとめなかったか。何か言う立場ではないとそんたくしたか

▼江藤農水相は八県知事らに、過去のワクチン接種の経験を語り「農家の気持ちはよく分かる。皆さんの努力に応えるよう、接種を決めなければならない」。同床異夢ということだろう。