2019年9月10日(火)

▼津市の前葉泰幸市長が市の広報紙に連載する「市長コラム」はいつも施策の成功例に満ちあふれている。最新号の「市民の飲み水を育む森」は6月に美里地域にオープンした公園「美里水源の森」にちなんでだが、ふと〝我田引水〟という言葉が浮かんだのは、水源汚染の危機を教訓に整備した関係者に失礼なことだった

▼危機とは、かつてこの地に産業廃棄物建設計画が進行したこと。旧津市が反対を表明し、産廃法が不備の中で全国初の水道水源保護条例を制定し、工事差し止めの仮処分を申請して業者に断念させた。7億円弱で業者から買い取った土地が公園のもとになっていると市長コラムは経緯をつづる

▼業者に売却したのは旧美里村の村民だろう。価値はないに等しく、ゴルフ場か産廃業者でもきてくれないかというのが旧村民の一部の声だった。加えて、旧津市は市民の水がめとして長野川の水利権を所有し、旧村民は目の前を流れる水を一滴も自由にできなかった。村の水道水源はぜい弱で、旧津市から高い値段で逆に水を購入していた

▼ブラジル・アマゾン地域の大火災で「私たちの家が燃えている」とフランスのマクロン大統領は言ったと本紙連載『地球の片肺を守る』。貧困対策としてブラジル大統領はアマゾン開発を主要政策とし、人々はこれまでも開発のため熱帯林に火を入れていたが、大火事で世界の目が集まった。先進国首脳会議(G7)は緊急支援に合意した

▼「大切な資源を後世にしっかりと引き継いでいかなければ」と前葉市長。こちらは産廃計画が気づかせてくれた自然の恵みである。