2019年9月3日(火)

▼伊勢湾台風発生から60年の節目の今年、県は木曽岬町を中心に桑名、いなべ、東員の4市町と合同で防災訓練し、自衛隊や海保など21機関、約1000人が参加した。各市町にまたがる海抜ゼロメートル地帯が最も被害が多かったことから広域避難が今回の特徴で、高齢者や障害者などの要支援者20人がバスで木曽岬町からいなべ市へ移動した

▼県の高齢化率約30%を上回る同町にして人数が少ない気がし、報道写真に障害者らしき姿が見えないのが気にかかる。地元の消防団員が町内を巡回し、住民に町外への早期避難を呼び掛けた結果はどうか。それによって、訓練の成果も違ってくるのではないか

▼伊勢湾台風の死者は県内で1200人以上。うち木曽岬町は328人で旧長島町(現・桑名市)に次ぐ惨状だったという。60年前は台風襲来の9月26日の数日前から降り始めた雨が各地の地盤を緩めていた

▼当日の雨量400ミリは日量として珍しくなかったが、数時間での集中で山崩れ、洪水など記録的被害をもたらした。上陸は満潮時刻の27日午前0時過ぎと重なり、同時に高潮がゼロメートル地帯に押し寄せ、短時間で生命・財産を奪った。水は60日間居座り、交通は農家が所有していた船に頼るしかなかった

▼堤防などは比較にならぬほど整備されたろうが、訓練は「地球温暖化の影響等により伊勢湾台風を上回る規模のスーパー伊勢湾台風」(鈴木英敬知事)を想定。車の避難が可能か。夜間直撃の対策は万全か

▼子どもの遺体にすがりつく母親らの当時の写真を見ながら、そんなことを考えた。