2019年8月31日(土)

▼「爆弾を拾ってはいけないということまで指導しなければならないのか」―共同通信加盟社編集局長会議で平成15年、共同通信社編集局長が嘆いた。イラク戦争を取材した毎日新聞写真部記者が土産物として持ち帰ろうとした不発弾がヨルダンの空港で爆発。手荷物検査所の職員ら4人が死傷した事件についてだ

▼取材協力者の男性2人に警察の報道用広報資料を送って処分を受けた朝日新聞記者は同社の調査に「提供を求められ、深く考えずに送った」と答えたという。同社の方は「取材で得た情報を報道目的以外に使うことは記者倫理に反する。重く受け止め、指導を徹底する」とコメントした。記者倫理としては「取材源の秘匿」と並ぶ基本中の基本。指導レベルはますます低くなってきたようだ

▼亀井静香衆院議員と田中康夫長野県知事(いずれも当時)の虚偽会談報道を反省して記者行動基準を定めたのは平成18年。すでにホームページで見られなくなっているが、それどころではないのかもしれない。警察広報文が取材で得た情報かどうかは異論もあろう。役所の広報文が報道機関だけに提供される仕組みは改められつつある。が、京都アニメ放火事件で、被害者の実名を公表するかどうかで、警察当局と報道機関、遺族の三者の見解は違った

▼事件被害者の公表基準は平成17年の閣議決定で警察が判断することになったが、新聞協会は原則公表で、掲載すべきかどうかは報道機関が判断すべきと主張してきた。警察情報を生で送信しては報道界の信頼が問われる。朝日新聞にその自覚はあるのだろうか。