<まる見えリポート>虫歯、全国平均上回る 学校現場、対策に遅れ

【虫歯のある子どもの割合】

小学生から高校生までの全年齢で全国平均を上回っている―。学力テストの結果なら朗報だが、残念ながら虫歯がある子どもの割合である。全国との差は縮まっているが、依然として厳しい状況だ。一方、近年ではフッ化物を用いた効果的な予防法が全国の学校で広まっているが、三重県内で実施している学校は少ない。背景には、学校現場での負担増を懸念する教職員らの「反発」があるようだ。

文科省の学校保健統計調査によると、県内で虫歯のある子どもの割合は、調査対象となっている5―17歳までで、おおむね5%ほど全国平均より高い。この傾向は10年以上前から変わっていないという。

虫歯の本数も全国平均より多い。平成30年度の県内の調査によると、12歳の虫歯は平均0・84本で、全国平均より0・1本多かった。ここ20年間で大幅に改善しているが、全国平均を下回るには至っていない。

ただ、県内の子どもが幼い頃から虫歯が多いわけではない。1歳6カ月の歯科検診で虫歯のない県内の子どもの割合は、過去10年で全国平均よりも多い。虫歯のある1歳6カ月児がいない市町もある。

しかし、1歳6カ月を過ぎた頃から虫歯のある子どもが増え、3歳児になると全国平均を上回り、その後は全国平均との差が広がっている。市町間で比較しても虫歯がある子どもの割合や本数の差が大きい。

なぜ県内の子どもに虫歯が多いのか。虫歯予防の啓発を担う県健康づくり課の担当者は「はっきりとした理由は分からない」としつつも「保護者の意識」や「菓子文化」などが理由ではないかと推測する。

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歯磨きの徹底や食習慣の見直しに加え、近年では虫歯の効果的な予防法が注目を集めている。フッ化物を用いた洗口(うがい)だ。厚生労働省もフッ化物洗口のガイドラインを出して効果を認めている。

県によると、フッ化物は歯を丈夫にするほか、虫歯を作る酸の発生を防ぐ効果がある。歯を磨いた後にうがいをしない予防法が注目されているが、これも歯磨き粉にフッ化物が含まれているためだ。

フッ化物洗口は既に大きな効果が出ている。平成16年度から全ての保育園や小中学校で導入している岐阜県山県市では、一人当たり約1・5本だった12歳の虫歯が25年度には、ほぼゼロになったという。

しかし、県内での実施は広がりに欠ける。県教委によると、県内の幼稚園と保育園、小中学校で、フッ化物洗口を実施しているのは平成28年度時点で9・7%。全国の都道府県では31位だ。

特に深刻なのは、小中学校での実施。小学校は松阪市と熊野市だけ。本年度は南伊勢町も小学校で始める予定だが、それでも県内で実施する小学校は24にとどまる。中学校での実施はゼロだ。

実施の障壁は「負担増」を訴える教育現場の声。洗口は週に一度だが、うがい薬の保管や、子供たちが飲み込まないよう指導することに加え、保護者が不安を訴える場合は希望者に限って実施するなどの配慮も必要となるためだ。

県教委も市町の教育委員会に小中学校でのフッ化物洗口を実施するよう促している。中には前向きに検討している教育委員会もあるが、教育現場とのはざまで実施の決定に踏み切れない市町が多いという。

県教委保健体育課は「県内の学校でフッ化物洗口が遅れていることに危機感を持っている。教職員を対象とした研修会でフッ化物洗口の効果を紹介するなど、粘り強く説得したい」と話している。