2019年8月25日(日)

▼「県で中止などの情報は把握していない」と、民間の日韓交流について鈴木英敬三重県知事が太鼓判を押したばかりというのに、県立津商業高校と姉妹校提携を結ぶ韓国の聖南ソンナム高校が、今年の交流訪問を断ってきた

▼国同士が対立している中では現実的に困難で、危険を伴うことは「表現の不自由展・その後」の例が示す。「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」などの脅迫が殺到し「来場者の生命・安全が第一」と愛知県が屈した

▼国不信が染みこんだ戦後焼け跡闇市派は減り、国の言うまま「自己責任」論などが急速に広がる日本だ。韓国の軍事協定破棄は日本政府も「想定外」だったという。想定外の積み重ねで国民が沸騰し、破滅的戦争に突入し、そして、責任者が誰もいなくなった先の大戦の教訓は忘却のかなただろう

▼韓国高校の中止の理由は「生徒の安全への不安」。「表現の不自由展」だけではない。文化の拠点とも言われる書店には嫌韓本があふれる。歴史的こだわりがある国ならずとも、日本は危険な国に見えるに違いない

▼「こんな時こそ」の交流は心意気だけでなく、受け入れ側に相当の覚悟と準備がいる。行政と一体にならなければ難しい。「草の根の交流は続けていく」とする知事に期待したい。豚コレラの養豚農家感染を一軒で食い止めているのも「できることは何でもする」という知事の決意と施策の功績だろう

▼日韓関係では過去の官僚時代の知見まで引っ張り出して韓国批判を拡大させた。安倍政権、というより安倍首相追随型だけに、交流中止が1件だけでとどまるか、懸念はある。