2019年8月16日(金)

▼寺に泊まり、座禅や写経などを体験する「寺泊」が外国人観光客に好評で「雨の音を感じながらの瞑想がとても心地よかった」というのが世界遺産・高野山で寺泊したノルウェー人の感想。切羽詰まって乗り出す寺社が増えているという

▼宿泊場所は「宿坊」と言って本来は僧侶や氏子、講、参拝者のために作られた施設。高野山は一般観光客受け入れの先駆者で、天然温泉を引いた露天風呂で知られ、いまや外国人が8割。檀家衰退で維持に窮した京都の5寺社が始め、世界遺産・仁和寺が一泊100万円で受け入れを始めたという。観光京都の面目躍如か

▼「坊主丸もうけ」は、元手いらずで収入全部がもうけになる僧侶を皮肉ることわざ。寺泊も、体験講座と組み合わせると宗教活動となり旅館業法の対象外。建物が文化財なら建築基準法も適応除外。収益を寺社の維持に充てると税の優遇措置も受けられる

▼民泊に寺泊が加わり、寺社の多い京都市民は大変なことに違いない。地元新聞が「暮らしと京都観光」のキャンペーンを始めた。祇園祭の山鉾の通りに10階建てホテルが計画され、通りを眺めるガラス張りの大浴場が売り。「ご神体を風呂から見下ろすのか」と地元はかんかん

▼観光客目当ての建設ラッシュの一方で、バスや地下鉄は観光客で市民が乗れない。騒音やゴミ問題で「観光公害」だと市民の反発を紹介するが、「観光客に失礼」「加害者と被害者とを対立の関係でとらえるべきではない」などの苦情がキャンペーンに寄せられるという。反論はしない、手をゆるめる気もないと、編集局長が書いていた。