<まる見えリポート>米軍オスプレイが県内初飛来 配備計画、高まる説明責任

【明野駐屯地に飛来するオスプレイ=伊勢市小俣町で】

先月、日米共同訓練の一環で三重県内に初めて米軍輸送機オスプレイが飛来し、在日米軍に反対の立場の市民団体が抗議の声を上げている。団体側の「オスプレイは事故率が高い」という主張に対し、記者は12―15日、防衛省にオスプレイの安全性について問い合わせたが、16日現在、具体的な回答は得られていない。国民の一部にオスプレイへの根強い忌避感がある中、同省は自衛隊へのオスプレイ配備計画を進めており、今後はより一層説明責任が問われそうだ。

日米共同訓練は先月4日―15日、滋賀県高島市の饗庭野演習場であり、陸自第3師団の約600人と米海兵隊から340人が参加。同省によると、「饗庭野に近く離着陸や機体の整備環境が整っている」ため、伊勢市小俣町の陸自明野駐屯地にオスプレイ4機が飛来した。

みえ労連や共産党県委員会など県内の11組織でつくる市民団体「オスプレイ来るな!三重県民の会」は共同訓練の期間中、明野駐屯地周辺で抗議活動を展開。「オスプレイは米国に帰れ」などと叫び、訓練の中止を訴えた。

背景には在日米軍に対する忌避感があり、同団体の田中茂二郞事務局長(67)は「在日米軍の存在を解消したい。その象徴がオスプレイ」と語る。その上で「オスプレイは事故率が高く、米国内では市街地の上空を飛ばないのに日本国内で飛ばすのはおかしい」と指摘する。

オスプレイは海兵隊に配備されているMV―22と空軍に配備されているCV―22があり、記者は明野駐屯地に飛来したMV―22の事故率を同省に問い合わせた。回答は広報担当者が「オスプレイの安全性について」と題した同省発行のPDFファイルの閲覧を促すだけ。内容はオスプレイの導入経緯や近年の事故の紹介が中心だ。内容について再度質問したが、担当者は「回答を待ってほしい」と言うばかりだった。

また、10万飛行時間当りのクラスA事故(死亡事故など)の件数から算出したMV―22オスプレイの事故率は、昨年9月末時点で2・85。ただ、海兵隊の他の航空機の事故率が分からないため比較できず、他の航空機の事故率を担当部署に確認させてほしいと頼んだが、広報担当者は「質問は広報が一元的に受け付けている」と語った。

伊勢市危機管理課の担当者は日米共同訓練に際し「事故率のデータを調べたが、オスプレイの値しか分からなかった。それだけを見ても高いのか低いのか分からない」と話している。

同市の鈴木健一市長は2月の定例会見で「オスプレイは安全性の面で市民の理解を完全に得られていない」と述べ、市民の不安が払拭(ふっしょく)されるまでは明野駐屯地へのオスプレイの常態化は認められない考えを示した。同省東海防衛支局にその意向を伝えている。

こうした中、同省は自衛隊へのオスプレイ配備計画を進めている。陸自が17機のオスプレイを導入予定。機体数は不明だが、佐賀空港への配備を調整している。明野駐屯地への将来的な配備は明らかになっていないが、航空学校を抱える関係上、可能性として示唆する声は賛成、反対派の双方から上がっている。

MV―22オスプレイは最大速度や行動半径、貨物の搭載量などの面で他機の性能を大きく上回っており、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の防衛でも活躍を期待されている。同省がオスプレイの性能や安全性を強調するなら、論理的かつ具体的な話で国民に対し、説明責任を果たすことが求められている。