<検証・三重県予算>技能検定、存続に危機 県との〝隔たり〟嘆く声

【職業能力開発協会が入る県栄町庁舎=津市栄町1丁目で】

「このままでは事業が立ちゆかなくなる」。1月某日、三重県庁の会議室。県職業能力開発協会の松田英明会長が県職員らに窮状を訴えていた。補助金が少なく、協会が担う事業を維持できないというのだ。

この事業とは、職業能力開発促進法が定める技能検定。労働者の技能向上を目的として60年前から始まった。都道府県にある協会の技能検定委員が労働者の技能を採点し、それに基づいて県が合否を判定する。

技能検定には、もう一つの役割がある。外国人技能実習生に与えられた在留期間の延長だ。現行制度は最大で延べ5年間の滞在を認めているが、定められた時期に検定を受けることを条件としている。

県内で検定を受ける外国人実習生は、ここ数年で大幅に増加。28年度は2千人程度だったが、30年度は約3300人と過去最高に達した。31年度は、さらに1000人以上の増加が見込まれている。

補助金は国と県が折半しているが、三重は全国最低レベル。協会の調査によると、28年度は約2千800万円で全国39位。国が示した上限額に占める県の「交付率」は51・1%で42位だった。

検定委員の人数も「同規模自治体と比べて半数程度」(協会幹部)。検定を実施できなければ実習生は帰国を余儀なくされる。松田会長は「このままでは、そんな事態も避けられそうにない」と話す。

そもそも協会の運営は「火の車」だ。「年間1億円の手数料収入はあるが、検定の事業だけを見れば赤字」(協会幹部)で会費などの自主財源も持ち出している。これに外国人の受験増が追い打ちを掛けている。

「こちらの訴えは県に届いたはず」と感じた松田会長だったが、31年度予算の内示を聞いて、がくぜんとした。交付される補助金は約3300万円。補正予算を含めた前年度の補助金を下回っていた。

検定を担当する県雇用対策課は「協会には十分な補助金を出せていない」と認め、理由に「財政難」を挙げる。財政課から「検定が増えれば収入も増えるのでは」などと指摘され、要求額を削られたそうだ。

一方、外国人材受け入れ拡大に関する県の事業は豊富だ。31年度予算は「情報や学習機会の提供」に約600万円、「安全安心の生活支援」に1500万円を計上。関係部署でつくる庁内調整会議も設けた。

その傍ら、補助金の少なさは「財政難」が理由なのか。それとも外部組織との〝隔たり〟からか。松田会長は「県の財政難は共有させられても、我々の危機感は共有してもらえないのだろうか」とつぶやく。