<検証・三重県予算>空飛ぶクルマ実証実験 過疎地の社会インフラに

【実用化された「空飛ぶクルマ」のイメージ(経産省提供)】

自動車が空を飛ぶ。映画のような自動車の開発が国内外で進んでいる。三重県はこの新しい技術が離島や山間部など過疎地の社会インフラになることを期待し、環境整備を進める。来年度はその第一歩として、開発中の「空飛ぶクルマ」を県内の空で実験する。

空飛ぶクルマは実はそんなに遠くない未来の話だ。政府が設置した官民協議会は昨年12月にロードマップを示した。事業化の目標は4年後の2023年と迫っている。最初は離島や山間部で事業化を進め、2030年代には都市部での実用化を目指す。

今年1月、米ボーイング社は空飛ぶクルマとして開発中の個人用自動飛行航空機の試験飛行に成功した。国内でも日本発の空飛ぶクルマを開発するプロジェクト「カーティベーター」が進み、トヨタやパナソニックなどがスポンサーとなっている。

実用化が夢物語ではなくなってきた中、次に必要とされるのは環境整備だ。離着陸する場所や空域の設定、機体の安全基準の整備など課題は山積み。官民協議会は来年度に空飛ぶクルマを実験し、導入に向けた課題を検討する。

その実験の場として県が名乗りを挙げた。県内には離島や山間部が多く、人口密集地も都市部に比べて少ない。協議会で想定された試験飛行の地理的条件に合致していた。県によると、県南部の複数の自治体がこの試験飛行に関心を示しているという。

県はこの空飛ぶクルマを使い、県内の事情に合った新たなサービスの創出を図りたい考え。これまで離島への移動は定期船やヘリコプターが中心だった。離島で空飛ぶクルマが実用化されれば、島と陸を時間に制約なく自由に行き来できるようになる。

そこで、来年度に2社の試験飛行を誘致する。官民協議会や市町と協力して環境を整備した上で、人を乗せることを想定して実験。風や天候の影響を調べる。導入した場合の効果や課題を企業に調査してもらう委託費として、当初予算案に約870万円計上する。

県中小企業・サービス産業振興課の担当者は、実験を実施する地域の安全への懸念に対し「地元の住民にしっかりと説明した上で、実験を進める」と語った。

経済産業省がホームページで公開している空飛ぶクルマのイメージ映像はまるで近未来の姿だ。県職員は「あの映像はちょっとできすぎ」としつつも「空飛ぶクルマの実験は将来の新しい産業を創出することにつながる。実用化までの間に県内の中小企業に興味を持ってもらいたい」と話した。