2018年10月18日(木)

▼文部科学省の新事務次官が就任あいさつで「面従腹背やめましょう」。どきっとする県職員は、もうそれほど多くあるまい

▼平成7年の県知事選で、副知事出身の対立候補の陣営を「県庁集票マシン」と非難したのは北川正恭氏である。「(副知事当選後)あんたの居場所はないぞ」と脅されたという非協力だった職員が、その幹部が北川知事誕生で「辞めないどころか、昇進辞令を直立不動で受け取っていた」と怒っていた

▼一人の県職員も辞めなかった初めての知事選でもあったが、後ろめたさでもあったか、「知事が代わっても、新知事の政策を補佐、実現するのがいい職員」という処世訓が庁内に広がった

▼大統領が代わればホワイトハウスが総入れ替えになる米国とは違う。以前の重点施策にこだわっていては公務員は務まらないのが国、地方にかかわらず日本の公務員だ。面従腹背をモットーとする元事務次官はそのための心の持ち方を語り、新事務次官は思い煩うなと言っているだろう

▼「議論すべき時はして組織が決めたことには従う」とも。開発指導課から環境部に異動して180度発言が変わった県職員がいたが、これはいい職員で、自殺した近畿財務局職員は違うということでもあろう

▼面従腹背は語源を中国最古の経典に求められる。為政者は歴代悩まされた人類固有の性質と言えなくはない。詔令の悪評に口をつぐみ陰でそしっていた高官が、面従を禁ずる当時の法律で死刑になった話が『史記』にある。以後、天子にへつらう役人ばかりになったそうだ

▼文科省はむろん、役人文化の今後が心配。