2018年6月15日(金)

▼「まさか、伊藤さんがそんなことをするとは」に続いて「税の滞納整理では目を見張る成果があった」―近鉄名古屋駅で駅員に暴力を振るったとして逮捕された県総務部参事兼税務企画課長の庁内評だ

▼いずれも褒め言葉であるらしい。後者については「業務を評価する声」という注釈付きである。かなり昔に読んだエッセーにこうあった。「子どものころ学校で父の仕事を聞かれても公務員と答えること。決して税務署と言ってはいけないと言われた」

▼病人の布団をはがしてもっていくというのは落語の世界だけの話かもしれないが、いつぞや滞納者を訴訟するという方針を打ち出した時は、県税事務所の相談コーナーに方針を伝える新聞記事を張り出した。納税者からの恨みを買うことが多い職業には違いない

▼滞納者と県との裁判を傍聴したことがある。県側は弁護士、滞納者側は高齢の女性で本人弁護。裁判官に助けられてはいたが、いかにも気の毒だった

▼過酷な仕事で徴税職員には特別勤務手当がついた。昔は課全体で徴税職員を支えなければ効果はあがらないとして課員全員に付いたが、行政改革で廃止された。金の切れ目が縁の切れ目は世間のことだが、人間関係に官民の区別はあるまい。付き合いが表面的になった

▼鈴鹿、紀州の県税事務所の長などを歴任したようだが、昔はそうした経歴で税務トップになることはなかった。良くも悪くもゼネラリストが優遇され、その道一筋のスペシャリストには、なかなか日が当たらなかった

▼そんな職業的性格、悲哀など、県全体からもはや消えているのだろう。