2018年6月5日(火)

▼統計が無味乾燥に見えるのは避けられない。昨年度の児童虐待相談件数が前年度比27・5%増の1670件で過去最多と言われても、一件一件の深刻さが伝わってこない。それだけに丁寧な説明が求められるが、県の子育て支援課は「警察が積極的に虐待を通告」「配偶者への暴力がある家の児童を心理的虐待の被害者として通告する事例が増えていることも理由と考えられる」「(家庭内暴力のある)児童を心理的虐待の被害者として通告する事例が増えている」

▼微増だった前年度は「高い水準で推移している背景」について「家庭、地域の養育力の低下」と「地域社会の関心の高まり」。矛盾した理由をあげているようでもあるが、この時の「子育てに悩む家庭が孤立した状態におかれている」という指摘はその後、どうなったか。件数が跳ね上がった理由だけを説明するのでは数字と実態がますますかけ離れてしまう

▼前年度になかった相談種別別件数を公表したのは、その溝を少しでも埋める試みだろうか。大半を占める心理的、身体的虐待とは別に、性的虐待7件増29件は、昨年の相談件数発表で児童養護施設職員の犯行が触れられなかったことからも気にかかる

▼26年度までは数字だけでなく今後の課題もあげていたが、毎年同じことを書くのも気が引けたか。「組織改正による効果」もその年度限り。虐待死事件を機に開発したリスクアセスメントツール(初期対応の的確化)の運用効果が期待ほどではなかったか

▼鳴り物入りで始めた子ども心身発達医療センターの効果も、むろん触れていない。