2018年5月27日(日)

▼事件発生から5年。ようやくスタートラインに立ったということなのだろう。朝日町中3女子致死事件で遺族と加害者家族との和解が成立した。止まっていた時間が動き出す。哀悼と償いの二筋道だが、終わりなき歩みが始まると思いたい

▼「和解」というのは、思えば残酷な言葉である。子どもの死を巡り「極めて低い」(遺族代理人)賠償額で〝和解〟を選択せざるを得ない胸のよどみはいかばかりか

▼衝撃的な事件だった。駅からも自宅からもそう遠くない、住宅地が間近な県道脇の空き地で少女は変わり果てた姿で発見された。空き地に電灯もなく、昼間も周囲から目の届かない死角のような場所だったという。逮捕されたのが事件当時高校生だったことも、衝撃だった

▼全国犯罪被害者の会が来月解散する。犯罪被害者等基本法の成立など、国を動かし「ある程度満足感はある」(代表幹事)。損害賠償命令制度創設もその一環で元高校生には8000万円近い賠償額が命じられたが、実効はどうか。協力を両親は確約したというが、中3女子の父親は「被害者救済に対する国の手当てが薄い。今後被害者補償の制度拡充に努めたい」。法はできたけれど、ではないか

▼鈴木英敬知事は空き地に街灯を整備したがそれだけで終わってはいないか。3年後、空洞化した住宅団地の公園で少年の暴行死事件が起きた。全国的にも、死角を利用して子どもを狙う事件が頻発している。死角を把握し、住民の目が届く仕組みを日ごろから機能させておくのが事件の教訓だ。行政、地域の不断の努力以外、未然防止の決め手がない。