2018年5月26日(土)

▼県の高等教育の始まり大正11年の三重高等農林学校で、県庁各部の幹部はかつては高農出身者で占められていたが、その本流である農林水産部の答弁が何ともちぐはぐだ。県議会環境生活農林水産常任委員会で、種子法廃止に伴い代替条例の策定を求められ、要綱と種苗法で対応するという

▼種子の開発や生産を都道府県に義務付けてきたのが種子法だが、要綱に置き換えただけでうまくいくか。種子法廃止と同時に発効されたのが農業競争力強化支援法。県の持つ種苗の生産に関する知見を民間業者に提供し、民間の技術開発、新品種育成を促進しろと言っている。大手、からめ手からの国の攻撃である。対抗手段が要綱一本では、あまりに心もとなくないか

▼イラク戦争は莫大な石油利権と、アグリビジネスを米国にもたらしたという。自由化、グローバル化でイラクの閉鎖的国内法に風穴を開け、各地の気候風土に合わせて200万種保存していた種子センターを爆撃で壊滅した。非生産的、家族経営的農業を批判し、穀物メジャーが大規模農地を整備。強力な農薬と、それをものともしない遺伝子組み換え種子を配給していく

▼種子は一代限りか特許法で守られ、毎年買わなくてはならない。イラク農民は穀物メジャーの歯車に組み込まれていく―堤未果著『(株)貧困大国アメリカ』(岩波新書)の趣旨だ

▼市場経済一辺倒の規制改革推進会議の農業批判と開放政策。爆撃ならぬドリルでの岩盤破り。種苗法は「知的財産を守るもの」であり「外国人の権利の享有」もうたわれている。イラクの風景が重なってくる。