2018年4月28日(土)

▼1人じゃ無理、3人死ななければ信号機はつかないよ―というのが、交差点の信号設置を要望する地元の一昔前のささやきだった。伊勢市内の石灯籠全撤去の方針転換に、改めてお役所仕事というものを思い知らされる

▼県は方針転換について「緊急で一部の撤去作業をした結果、上部と柱がモルタルだけで接着されている灯籠や基礎の部分が小さい灯籠が見つかり、想像以上に不安定だったため、安全とは言えないと判断した」。毎年安全点検し、10年間で何十基も撤去したと言ってきた同じ口が言う言葉である

▼交通事故に伴う石灯籠の危険性が指摘されたのはむろん今回が初めてではないが、県は安全点検に、その危険性を無視し続けてきた。特に移設整備計画を提案し、県も期待した社団法人に放漫経営が発覚。初の解散命令を出さざるを得なくなって以降、根本的解決をことさら回避してきたように見える。事件は事実関係、検証の有無もホームページなどに一切痕跡はなく、誰の責任も問われずに抹殺された印象だ

▼死亡事故で緊急撤去したのも17基。残る300基余は危険と判断したら全撤去するとした。先送りということだろう。犠牲者がまだ1人というわけでもあるまいが、東南海大地震発生でひとたまりもないことは分かっていても誰も何も言わない

▼国が入った会議で全撤去へ一転し「今回の事故で安全確保の大切さを再認識した」と県。ようやく思い至ったということか。次に無謀運転などで犠牲者が出たら今度は確実に自分らの責任が問われることを避けたかったか。どちらかは各位、判断すべき。