2018年2月3日(土)

▼防火文明成熟社会で、多くの犠牲者を出す火災が高齢者や生活困窮者が暮らす建物で繰り返されるのはどうしたことか、というのは全国紙コラムの命題だが、刑法の厳罰化は消費税と同様「強い逆進性が存在する」と、浜井浩一龍谷大学教授がNHKテレビの「視点・論点」で語っていたのを思い出した

▼受刑者が減少する中で高齢者が増加しているのは日本の刑務所だけの特徴で、理由の一端は厳罰化にあるという。多くは窃盗犯(万引)だが、罰金10万円は社会から切り離された生活困窮の高齢者には難しく被害弁償、示談も成立しにくい。認知症なども増加傾向で、検察官や裁判官に「改悛の情」も示せない。実刑になりやすいというのだ

▼生活困窮や孤立には高齢化や心身障害などの事情が大きいが、日本の刑罰は犯罪行為だけ抜き出して責任を取らせて「これにて一件落着」。反省させて社会に戻す仕組みだから、実刑でますます断ち切られた社会との修復は困難で、再び罪を犯して再犯者としてさらに実刑確実となり、刑務所は仕事や家族を失った高齢者やホームレス、障害者で一杯になったというのだ

▼生活保護費が削られ、生活保護自体が親族への養護確認などで申請しづらくなり、高齢化に心身障害が重なって社会とのつながりも薄くなって無認可、すなわち自己負担に耐えられる施設に流れ着く。人的・経済的に自律他律の制約があるそんな施設が増えると火災なども増えてくる

▼無認可施設を社会から閉め出して解決できる問題かどうか。「刑務所を見れば、その国がわかる」と浜井教授は言っている。