2018年1月31日(水)

▼本紙一面トップの記事が「三重大、ロート製薬が薬草で肥満予防共同研究へ」で、社会面トップが「大学病院のパワハラ訴訟で三重大に賠償命令」。間が悪い。三重大も泣きたいような気分ではないか

▼薬草研究では平成19年、便秘薬に用いられる薬草「ダイオウ」に胃ガン細胞死滅成分があることを突き止めている。肥満予防効果を確認する小魚「ゼブラフィッシュ」の研究にも定評があり、透明金魚を開発した原点ではないか。そうした長い地道な研究と並行して、旧態依然の組織管理が続いていたようだ

▼病院側の対応に違法性は認められなかったという。にもかかわらず「パワハラとして不法行為を構成する」と認定された。指示違反や独自の見解で研修を欠席した男性助教に対し、文書による指示命令や始末書などの提出をもとにした懲戒処分をしないまま、男性助教に退職願一式を送付、職員録への登録を二度抹消など、退職せざるを得ないように仕向けたとしたら、パワハラ以前の問題だろう

▼同大の「セクハラ防止対策ガイドライン」も相手が許容する良好な人間関係や、嫌がっていることが分かったら繰り返さないなどを指導している。セクハラの多くが良好な人間関係の中で発生し、その維持のために嫌がっていることを表しにくい特性があることに気づいていない

▼パワハラを定義した厚生労働省は典型例を6つ示している。暴行、暴言に隔離、遂行不可能なことの強制、私的なことへの立ち入り―などだが、認定されたのは、ある意味どれにも当てはまらないことを三重大はかみしめるべきである。