2017年12月22日(金)

▼元横綱の暴行事件で一部を除き関係者を処分した日本相撲協会について、スポーツ倫理学の早稲田大学教授が「社会と常識がずれている」。責任をとらない政治経済社会の組織を散々見せらている。せめてスポーツの社会だけはということか

▼事件発生から2カ月。75日にはまだ間があるとはいえ、世間の関心が一向に衰える気配がないのは、さすが国技である。一門、部屋、親方、兄弟弟子など、古い日本の大家族の構造になぞらえた社会に対し、共感や反感も含めて、それぞれ思い当たる節が尽きないのかもしれない

▼宴会での無礼講は日本の由緒正しい慣習だが、酒席で説教を始める上司が少なくないのは誰もが知っている。話を合わせなければならないのが大方の部下の宿命でもある。実際どうするかは、あいまいさに満ちている

▼礼儀、礼節に外れる弟弟子を教え、正すのは「先輩の義務」と言ったのは元横綱日馬富士だが、酒席でそれを教え始めたのは横綱白鵬。話が終わったとしてスマホをいじり始めた弟弟子とその態度にカッとした日馬富士―。社会の上下関係の中でどこでも見かける行き違いだが、その感情を巡る説明は、百万言を費やしても尽きることはない。そこに疑似家族で構成される関係者が加わる

▼事件をきっかけに白鵬の取り口や言動に横綱審議会が不快感を示し、ファンの批判が寄せられている。一方、貴乃花親方へのかたくなな態度にも、同審議会や危機管理委員会、評議会などの組織で不満が渦巻く。相撲社会を介して異質を排除しようとする村社会の伝統も、脈々と息づいている。