2017年12月21日(木)

▼三菱マテリアル子会社で、製品検査を巡る新たな不正が見つかったと発表した。昨年11月の発表以来、何度目の「新たな」になるか、どれがどれやら頭がくらくらしてくるが、三菱マテの竹内章社長は「本社からの指示に基づくコンプライアンス違反の事例ではない」

▼同社長は、当初から「本社が不正に関与していない」と言い続けてきた。「本社からの指示」や「コンプライアンス違反の事例」など、関与の中身をより厳格に規定したことになるが、問題の範囲を限定すればするほど、責任が問われにくくなるのは、爆発事故の予見性ばかりではあるまい

▼新たに公表されたのは、本社工場と子会社の検査未実施11件と、子会社の現場が隠ぺいしていたという携帯電話やパソコン用のコイル状電子部品のデータ改ざん。そもそも子会社から改ざんの報告があって九カ月後に発表したりしてきたのだから、どれが隠ぺいか、観客には分かりにくい。分かりにくくする時間も十分という気もする

▼現場の実態を無視したトップの成績至上主義が末端の不正を誘発することは、東芝の不正経理もものづくりの現場で相次ぐデータ改ざんも変わるまい。東芝は過酷な収益改善への「チャレンジ」の強要が不正経理を招いたとして歴代社長に損害賠償を請求したが、当人らは「改善要求は経営者として当然」など反論している。責任を問うのは容易ではない

▼三菱マテ社長は本社の関与は否定する一方で、不正の原因について「調査委員会に委ねている」と一切の言及を避けている。引責辞任など思いもよらずということだろう。