2017年12月12日(火)

▼しめ縄づくりや年賀状の話題が新聞に載り、押し迫った感が強まる。作家の重松清さんが「年賀状の力」の題で手書き文字の効用を書いていた

▼「そろそろ書き始めないと」と母らが井戸端会議で、半ば憂うつ、半ば年の瀬のけじめに臨む決意をみなぎらせたのは今は昔。あっという間に印刷発注の時代というなり、手書き文字のない年賀状も珍しくなくなった。一言でも手書きを添えるのが「人と人とをつなぐ言葉の力」が年賀状の力だと、重松さんは言う。悪筆の劣等感は別にしての話だろう

▼一時期、セミナー会社に在籍したことがある。参加者への礼状が苦痛だった。案内状などは印刷業者へ発注したが、礼状だけは手書きでなければ気持ちが伝わらないというのが経営者の信念で「下手でも真心を込めて書けばいい」という指示に異論はなかったが、我が拙い字を眺めると、きれいな印刷文字に比べ果たして真心が伝わっているのか、自信をなくした

▼はがき用の小型印刷機やワープロの普及で、公的文書に手書きは失礼という風潮になり、報道の現場からも原稿用紙が駆逐され、手書きにこだわる外部執筆者は厄介な存在となった

▼かつて年賀状は元日に書いていたが、郵便局の元日配達サービスに伴い、年末投函になったという。電子メールなどで済ませる人も多く、年賀はがき発行枚数は減少を続けているそうだ。「年賀状が印刷だけで終わっていたら、ちょっと寂しく思ってしまう」と重松さん。新年のあいさつの習慣は変わらなくても、そう思う世代は減少していくのだろう。そんな予感が寂しくさせる。