2017年12月7日(木)

▼鳥取県警は、大相撲の元横綱日馬富士の暴行問題で「厳重処分」を求める最も重い意見を付け、近く書類送検するという。三重県警は五人が死亡した三菱マテリアル四日市工場爆発事故で、処分を求める意見なしに元工場長ら二人を書類送検した。県警の捜査能力は、昔ながらの個人間のけんか騒ぎには威力を発揮しても、複雑な現代社会がもたらす事件にはほとんど無力なのではないか

▼事故から半年後、同社の事故調査委員会は「原因物質の十分な知識がなく、リスク管理が不十分だった」としながらも「爆発の想定は難しかった」。県警はそれから四年かけて、調査委の結論をなぞった。化学の理解力のお粗末さということか

▼化学への無知は人後に落ちぬが、二人が死亡した14年前のRDF(ごみ固形燃料)施設爆発事故との類似性を思わずにはいられない。事前に複数回、小爆発があったが、県企業庁は火事だと過小評価し、原因を究明しなかったことが大惨事につながった

▼水分を含むと発熱し、可燃ガスが発生するなどの知識に乏しく、消火などのための空気流入や放水が大爆発を誘因したと推定された。事故調査委員会が半年後にまとめた報告である

▼三菱マテリアル工場爆発事故も事前に複数回の小爆発があり、水分混入が原因。爆発の可能性もある危険な物質だと承知しながら、知ろうとすれば入手できた危険なメカニズムの情報の不勉強、無知が逆に「知らなかった」の免罪符になる

▼大事故で責任者が次々無罪放免されていく。福島原発事故も予見可能性が問われたが、警察の出番はなかった。