2017年12月6日(水)

▼懇意にしていた社長さんから、平成9年ごろのことだが、中元が届いた。包装紙を解くと、贈り先として県幹部の名前が書かれていて返送用封書がある。趣旨は「このたび県では虚礼廃止が指示され恐縮ながら返送させていただきます」。中身は食品で、大量に戻ってきて途方に暮れ、中を改めず思いつくまま片っ端から送り直す社長さんの顔が浮かんだ

▼中元をいただいたのがその1回だけだったのは、県の倫理指針の徹底状況を社長さんもよく理解して〝無駄ダマ〟を撃たなくなったからだろう。前年にカラ出張事件があったことに伴う〝県職員意識改革〟の一環である

▼それから2年間、カラ出張を続けていたというのが本欄の県教委評の定番だが、度会町は今も健在らしいから県教委も愁眉を開く心地がするのではないか。官製談合防止法違反罪で猶予刑を受けた同町係長は、中元、歳暮を受けていた。カラ出張発覚の元になった官官接待事件以来、国、地方で制定された利害関係者からの贈答品禁止の倫理指針も、町までは浸透していなかったか

▼ロックフェラーセンター買収など、日本企業が米国で大活躍したバブル期は、中元、歳暮などの伝統がビジネスチャンスを有利に導いたといわれた。やがて不公平取引として排斥されるのだが、タックスヘイヴン取引を暴くパラダイス文書で、流出先の法律事務所では関係先への「クリスマスギフト」が重要戦略だったと報道されていた

▼役人へのギフトの内容が受けられるサービスを左右するという。日本の伝統が北大西洋の島々で思わぬ種を実らせているとみえる。