2017年11月11日(土)

▼いじめ件数が全国的に増加している中で、県の4―9月は3年ぶりに減少した。まことにご同慶の至りだが、長期減少傾向を示しながら基準が変わると急増する歴史がある。祝意は早計かもしれない

▼訴訟になっている県立高3女子の例は対象期間外なのだろうが、争点の一つが高1で「いじめではない」と判断し、高3で「いじめ重大事態」と認定し「高1との因果関係はない」「対応に問題なかった」と主張する。そんな県教委の「重大事態」の発生がなかったという発表をどこまで信用したらよいか

▼「半数弱は3カ月間解消した状態が続いているのを確認した」という解消率に胸を張るのもいつもの県教委だが、文科省は「いじめ解消の定義」について「3カ月目安のいじめ停止の継続」とともに「被害者が心身の苦痛を感じていないこと」をあげている。後者に触れようとしないのは、裁判への影響をおもんばかってのことか

▼鈴木英敬知事はいじめ防止条例制定へ向けてSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の活用とともに、子どもたちが傍観者にならないようにするとしている。加害者と被害者が入れ替わるいじめでは、自己防衛のため加害側に消極的に同調する態度が指摘されている

▼次回の総合教育会議で案を示す。教育行政への首長権限強化を歓迎し同会議を主宰する知事だが、越境入学問題では、調査校の全校拡大を申し入れたが、越境入学認定の方向に「ベストではない」と言ったきり傍観者に徹した。君子危うきに近寄らず。子どもが傍観者になる気持ちはよく理解しているに違いない。