2017年7月12日(水)

▼ついに参考人として国会で政府と向き合うことになった前文科事務次官、前川喜平氏が、座右の銘は「面従腹背」だと言っていた。トップを極めたキャリア官僚の心理など思いも及ばぬが、県庁詰めになって私淑した県幹部が「何も嫌な仕事をやる必要はない。サボればいいんだよ」。昇級・昇格が遅れても下がるわけでなし、公務員の特権だみたいな話だった

▼異動した途端に前言を翻して新しい部門に溶け込んでしまう、そんな職員への不信感を語った時のことだ。開発指導課長としては、ゴルフ場開発抑制の県独自のホール規制を編み出した。消費課長の時は、大物婦人団体代表を追い詰めた。定年制前の勧奨退職時代に二年が原則の部長級ポストを初めて三つこなした

▼要は、サボったところなど見たことはない。意に沿わぬ仕事など体よく避けても、やらねばならぬ仕事だけで時間は足りないということかもしれない。「役人というのは、施策遂行の途中で手を押さえられると後ろに手が回ることはある」とも言った

▼部下だった職員がいわく。ある団体の福利厚生施設を風致地区に建てることになったそうだ。複雑な許可を一つ一つ取っていては期日に間に合わない。仮の許可でどんどん作業を進め、完成後しばらくかけて正式な書類にまき直した。「こんなことしていいんか、と身がすくんだ」と快活な部下らしからぬことを言った

▼断じて行えば鬼神もこれを避くか。信念を貫く職員が、今はいても困ろう。法規ルールを説く職員ばかりになったが、国には若干のサムライがまだいるのかと少し楽しくなった。