2017年6月27日(火)

▼司法試験合格者の大幅削減を求める千葉県弁護士会の会長が「このままでは共倒れだ。経済基盤が弱体化すれば、住民訴訟など、採算は低いが、公益にかなう活動の担い手が減ってしまう」

▼国の司法制度改革で合格者が急増しても裁判官や検察官が増えるわけではない。検察官が公訴権を独占し、有罪率を権威としている以上、ニーズが増えるほど裁判所へ持ち込まれる事件比率は減少する仕組み。弁護士だけが増えて食えなくなる、すなわち「経済基盤が弱体化」する。だから、採用数を削減して小さいパイでも食えるようにしてくれということだろう

▼大量合格のきっかけとなった「二割司法」説も批判の的。泣き寝入りや政治決着、行政指導、ゴネ得、暴力団介入が紛争解決の八割を占めているというが、根拠はない、実態がないんだというのが批判論だ。検察のストーリーや行政の「そんたく」が数値化しにくいことを忘れている

▼裁判員の辞退者が増えているそうだが、検察審査会の強制起訴が相次いで敗北している。市民の司法参加が機能していないことを物語る。宝塚線脱線事故も、JR西日本の歴代三社長の無罪が確定した。自動列車停止装置(ATS)整備問題など、検察が起訴断念した争点を指定弁護士が踏襲している。市民感覚を法廷戦術に反映させる視点も工夫もない。知らない方が得だというあしき判例が残るばかり

▼検察審査会の思い、遺族の無念に寄り添うことができなかった。八割市場が司法に流れないのは当然で、公益にかなう活動の担い手が減る前に、活動へのニーズそのものが減る。