▼警視庁の記者クラブを舞台にして人気だった昭和三十年代のNHKテレビドラマ『事件記者』の脇役クラス、一匹おおかみの〝アラさん〟が好きだったから、彼を尾行して特ダネのおこぼれにあずかろうとする新米記者との駆け引きが楽しかった。週刊誌「週刊文春」が「週刊新潮」の中づり広告を〝不正入手〟して自前の記事を一新させたり書き換える〝スクープつぶし〟をしていたという「週刊新潮」の告発特集に昔を思い出す
▼週刊誌の内情は知らぬから〝不正〟を察知した新潮側が対応として中止を申し入れるか事実を突き止めるかの二つというのはそうかと信じ、前者はシラを切られたらおしまいというのもなるほどと思う
▼漏えいし続ける実害に堪えて文春社員が取り次ぎ業者から中づり広告を受け取るまで突き止めたのには、「文春砲」ともてはやされ、ある種〝権威〟ともなった文春の〝裏の顔〟を引っペがしてやりたいという〝週刊誌的興味〟もあったのではないか
▼規則に違反して田中角栄元首相の法廷写真を盗撮した新潮社の写真週刊誌『フォーカス』が部数を爆発的に増やし、少年法に抵触するなどして激減し休刊に追い込まれた。不正競争防止法や偽計業務妨害などをあげているが「週刊新潮」は法での決着を求めているわけではあるまい
▼盗作盗用は新聞界でも珍しくない。相手側に通告して対応を求めるのが一般的。取次業者のずさんな情報管理だけは散文的だが、朝日新聞に「生まれながらの正義感」と評された「週刊文春」編集長らがどう反撃するか、現代版『事件記者』の続編が楽しみ。