-「目閉じても塗れる」 将来は建設会社を目指す- 「江川塗装」社長 江川稔規さん

【「生まれ育った四日市に必要とされる企業になることで恩返ししていきたい」と話す江川さん=四日市市で】

 平成18年、1級建築塗装技能士資格取得をきっかけに独立し、市内の工務店の下請け会社として四日市市尾平町で「江川塗装」を創業した。同26年に法人化して株式会社とし、北勢地域を中心に塗装や防水工事、リフォームなどを手掛け業績を伸ばしている。

 尾平町で建具屋を営む両親の下、2人きょうだいの長男として生まれた。幼少時は、3歳年上のおとなしい姉とは反対に好奇心旺盛な性格で、火災報知器を鳴らしたり、小学校の備品を壊したりと、手に負えないいたずらっ子だった。勉強は苦手だったが、走ることだけは誰にも負けず小5で三泗地区小学校大会の幅跳び競技に出場した。

 「他人にだけは迷惑を掛けるなよ」が両親の口癖だったという。「子どもを思う親心とともに人の痛みが分るようになったのは、ずっと後になってからだった」と振り返る。

 三重平中卒業後は、先輩に誘われて塗装会社に就職した。鉄部の汚れやさびを落とす塗装の下準備や足場組みなど、職人の補助作業から教わり始めた。きつい、汚い、危険の3K仕事に何度もくじけそうになったが、親方や先輩職人らに励まされ、徐々に仕事に自信を持てるようになった。

 入社から11年目、27歳で1級建築塗装技能士の資格を取得。知人から元請けとして仕事を依頼されたのをきっかけに念願だった「江川塗装」を起業した。自宅一角を事務所に、軽トラックに塗装道具一式を乗せて営業と施工の全てをこなした。口コミで徐々に顧客が増え、3年ほどで仕事を軌道に乗せることができた。

 家の外壁や門の外構など、通常は10年が塗り替えの目安となっているが、以前施工した顧客らから「10年たってもきれいだが塗り替えた方がいいか」という声が多い。新規の顧客からは「丁寧にやってくれてありがとう」と喜ばれ、より一層頑張ろうという原動力になっている。

 父則美さん(70)と妻公子さん、長男咲人さん(12)、長女詩織さん(9つ)の5人家族。公子さんは、子どもたちが通う小学校のPTA役員を務め、軟式野球に打ち込む2人の送り迎えもしている。夕食時は、我先にと今日あったことを話す子どもたちに耳を傾ける。「家事も子育ても任せっきりの妻には感謝しかない。子どもたちの成長が何より楽しみです」と話す。

 数年前からは、市内の私立幼稚園や運送会社のリフォーム、温泉旅館の外壁塗装などの大規模改修工事も、経験豊かな職人らと共に手掛けるようになった。「塗装一筋25年。目を閉じていても音と感触で塗れるようになり、塗装が天職だと感じている」という。

 「将来は、設計から施工、管理、メンテナンスまでをトータルで受注できる建設会社を目指したい。多くの方々の支持を得て、生まれ育った四日市に必要とされる企業になることで恩返ししていきたい」と意欲を語った。

略歴: 昭和53年生まれ。平成6年三重平中学校卒業。同年塗装会社入社。同18年1級建築塗装技能士資格取得。同年「江川塗装」創業。同23年四日市青年会議所入会。同26年株式会社「江川塗装」に法人化。同27年県塗料塗装振興会入会。