
四日市市馳出町の「フローラ」は、父の善業(よしなり)さん(76)が昭和57年に創業。植物が健康に生育し、なおかつ自然にも人にも無害なものをと、長年の研究と実験から開発した「天然植物活力液HB―101」の販売を始め、その画期的な効果によって国内だけでなく世界50カ国以上に販路を拡大し、業績を伸ばしている。
ミャンマー高地にあるインレイ湖で盛んに行われている浮畑農業。使用する農薬での水質汚染が懸念されていると知り、農家の人々に「HB―101」を勧めた。3年後、使用した畑でトマトの収穫量が2倍半になり、市場価値も上がったと喜ばれ、ほかの畑でも使われるようになった。
国内では、宮城県・護国神社の樹齢約300年の臥龍梅が弱ってきたと造園業者から相談を受け、「HB―101」を定期的に散布してもらった。数カ月後、「新芽が出てきた。一安心です」と感謝の報告があり、商品の良さを再認識できた。
令和元年、父から「バイオ技術の力で世界を幸せに」という企業理念とともに経営を引き継いだ。本社と同市河原田町のC&F中央研究所、河原田事業所合わせて113人の社員とその家族が、豊かで幸せになる会社を目指すことを胸に刻んだ。
「HB―101」をメーンに、店舗販売の純植物性消臭液「ニオイノンノ」、通信販売の植物性育毛剤「HG―101」、天然由来の化粧品、健康食品など、お客様の要望により新たに開発した商品も売り上げを伸ばしている。自社の試験農場のほか、国内外の大学との共同研究も進めている。
いなべ郡で3人きょうだいの長男として生まれた。将来は高齢者に寄り添う仕事に就こうと、県内の大学の社会福祉部を受験し合格したが、両親が入学金の納付期限を忘れて進学できなくなり、ピザ配達のアルバイトを始めた。
短期のつもりが3年目になった頃、父が事故に遭って入院したと連絡があった。アルバイトを辞めて、会社からの書類を病室の父に届け、父の指示をメモして会社に戻るという、会社と病院とを往復する伝書バトのような日々が始まった。
3カ月後、父は驚異的な回復力を見せ、仕事に復帰した。その間、徐々に仕事内容を把握できており、フローラに入社した自覚のないまま社員として勤務し、父と経営コンサルタントとの相談で決定した海外への販路開拓や、通信販売のためのコールセンター開設に携わるようになった。
それまでワンマン経営だった父が、息子の意見には耳を傾けてくれるようになった。それを機に「フローラ」を父から引き継ぎ、父は経営指導や総務機能を持った新会社「フローラHD」を本社屋内に設立して社長に就任した。
福利厚生面では社員旅行や食事会のほか、毎月、カメラ担当者が各課を回って全員の笑顔を撮影して張り出し、投票でスマイル大賞から40位までを決め、自社製品の中から好きな物を賞品に提供して好評を得ている。
妻みどりさん(42)と長男善雅さん(15)、長女美心乃さん(13)、次男元哉さん(8つ)の5人家族。「ファミリー企業として会社を継いでくれる子がいたらと思うが、それぞれが選ぶ道を応援したい」と話す。
父が始めた植樹やアマゴの放流など、自然の生態系を豊かにするための社会貢献活動も引き継いでいる。「既存のお客様に加え、農業・園芸業界以外にも客層を広げ、より一層、植物技術の研究と開発に力を注いでいきたい」と熱く語った。
略歴: 昭和59年生まれ。平成14年津田学園高等学校卒業。同18年「フローラ」入社。令和元年「フローラ」社長就任。