─農業界SDGsのパイオニア─ 中古農機具買取・販売「農機具王」三重支社長 椎葉彰さん

【「今後は人材の育成とともに新たな集客の仕組みを構築したい」と話す椎葉さん=鈴鹿市道伯で】

「農機具王」は平成23年、滋賀県で友人ら5人と共に創業。不要になった農機具の買い取りと販売に特化し、現在、北は青森、南は鹿児島まで23県33カ所に支社と店舗を置き、事業を展開している。同28年に三重支社長に就任し、次世代が担う農業界に貢献すべく誠実な対応で業績を伸ばしている。

関わる人全てにプラスの循環を起こす「全方良し」がモットー。愛着のある機械を手放す相手の気持ちになり、「また、どこかの農家さんで活躍してくれます」「見送ってあげて下さい」と、農家の方々の思いに寄り添いながら丁寧な買い取りを心がけている。

メーカーでは下取り価格がつかないものも、古い物や故障している機械も需要があれば買い取り、需要がない場合も無償で引き取って処分している。「新たに購入する資金にできた」「空いたスペースを有効活用できるようになった」と好評を得ている。

夫を亡くし、農地を貸すことにした60代の女性から、使わなくなった農機具を手放したいと依頼があった。種まき機から育苗機、トラクター、コンバインなど一式を査定、買い取り価格を提示し、成約後は引き取っていく機械と一緒に女性の写真を撮ってプレゼントした。「夫と共に働いた農機具との写真がうれしく、倉庫の掃除までしていただいてありがたかった」と喜ばれた。

滋賀県で4人きょうだいの長男として生まれた。小4からスポーツ少年団に入り野球を始めた。中学ではバスケットボールに転向して3年生で県大会出場を果たし、高校卒業まで打ち込んだ。

卒業後は、ダイアモンドリゾートホテルに入社した。フロント業務に携わったが、半年後にホテルが倒産した。仕事を失って、初めて自身の人生について真剣に考えるようになった。その後10数年間、住宅建設や設備工事、車両関連作業、肥料販売会社の営業などさまざまな職業を経験しながら、一生をささげたいと思える仕事を模索した。

そんな時、高校時代の先輩から誘われて「農機具王」の創設メンバーに加わった。後継者不足などで離農する高齢者が増加する中、ネットやチラシ広告、口コミなどで中古農機具の買い取り、販売の業績は右肩上がりで伸び、数年で全国展開をするまでに成長した。ようやく、「これだ」と実感できる仕事に巡り会った。

妻由重さん(40)と長女夢叶さん(18)、次女恋叶さん(14)の4人家族。滋賀県から鈴鹿市に単身赴任して7年、日々のラインでのやりとりと週末に家族と買い物や食事をして過ごすひとときが最高だという。「自分に似て、バスケに頑張っている娘たちの成長が楽しみ。子育ても家事も安心して任せられる妻のおかげで仕事に打ち込める」と話す。

「創業から12年。農業界でのSDGs(持続可能な開発目標)を実践するパイオニアであり、業界トップの我が社の仕事に誇りを持っている」と話し、「今後は人材の育成とともに新たな集客の仕組みを構築して、各支社の売り上げがより一層伸びていくような会社にしたい」と意欲を語った。

略歴:昭和55年生まれ。平成11年滋賀県立日野高校卒業。同年「ダイアモンドリゾート」入社。同21年肥料卸販売会社入社。平成23年「農機具王」共同創業。

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