
鈴鹿市河田町で昭和63年、20歳で「東洋実業運輸」を創業。4トン車で地元自動車メーカーに部品の納品代行をする仕事からスタートした。翌年、バブル崩壊によって仕事が激減したため新たな取引先を開拓し、現在は、東北から中国地方までをエリアに大・中型車など21台で、衣・食・住の全てに関わる物を運び、業績を伸ばしている。
「人に喜んでもらえる仕事」を理念に掲げ、社員23人が、衣類、食料品、建材など、お客様の大切な商品を「無理せず、慌てず、安全に運ぶ」ことをモットーに輸送している。
以前、終業後に「翌朝までに栃木県に部品を届けてほしい」と依頼があり、帰り支度をしていた社員がすぐに出発した。後日、依頼主から「無理を聞いてくれてありがたかった」と感謝された。「日夜、どこかを走行している社員の安全を常に気遣う生活だが、喜びの声を聞くと、この仕事をやっていて良かったと実感する」と話す。
鈴鹿市で自営業を営む両親の下、3人きょうだいの次男として生まれた。小2の時、事業に失敗した両親が県外に働きに出たため、姉は叔母、兄は叔父、自身は母の実家に別々に預けられて半年余りを過ごした。「家族が一緒に暮らせるようになった時は、うれしくて泣いてしまった」と振り返る。
合格していた高校への進学は経済的な理由から断念し、料理人の道を選んで調理師専門学校に進んだ。卒業後は、結婚式場に就職が決まっていたが、式場の完成が遅れたため葬祭部に配属され、葬儀全般の仕事に携わった。しかし、自分には向いていないと感じるようになり、2年後、塗料の卸売り会社に転職した。塗料の配達業務に慣れた頃、叔父から運送業を始めてみないかと勧められ、自身の可能性に挑戦してみようと起業を決意した。
長女利奈さん(31)と次女希歩さん(29)、次男隆さん(26)はそれぞれ独立しており、今は、事務全般に携わる妻千代美さん(52)と、家業を継ぐべく輸送を担当する長男丈さん(27)との3人暮らし。「仕事と家事、孫の世話までこなしてくれる妻には感謝しかない。子どもたちには、パートナーと幸せな家庭を築いてほしいと願っている」と話す。
唯一の楽しみは、小学時代から大ファンだった歌手の近藤真彦さん(愛称マッチ)の追っかけ。今はすっかり夫に感化されてファンになった千代美さんとともにライブツアーやディナーショーはもちろん、レーシングチーム監督も務めるマッチの応援に、全国各地のサーキットにも出かける。「マッチの歌は人生の応援歌。かっこいい生き方に憧れ続けている」と話す。
「今後は、お客様の大切な荷物を預かる倉庫事業への参入を視野に入れている。より一層、お客様に喜んでもらえるよう精進し、しっかりとした基盤を作って長男にバトンタッチしたい」と目を輝かせた。
略歴:昭和43年生まれ。同59年中部調理師専門学校卒業。同年「新生三重冠婚葬祭」入社。同61年「三重塗料」入社。同63年「東洋実業運輸」創業。