気合で不況が乗り切れるか?

 気合いで出来るのは、精神的な緊張感を高めることぐらいです。

技量が伯仲している女子プロレスのオリンピック大会で「気合いだ・気合いだ・気合いだ、京子・・・」と連呼して、娘を応援していた元プロレスラーがいました。与条件が同じで、技術がほぼ同等なら、あとは気合いでなんとかなるかもしれませんが。

「景気は底を打った。回復しつつある」という非現実的な、事実と願望とを混同したマスコミ論調にすがりつく手合いが散見されます。公務員や教職員に特に顕著に見受けられます。

日本の特徴といいますか、日本人の特質は物事の不徹底性だという識者がいます。改革も改善策も途中で苦しくなって、耐え忍び続ける根気に欠け、腰砕けとなるという指摘は、1990年以降、常に当たっていました。

「日本人は一度しか攻撃してこない」と米国軍人(日露戦争後に親善訪問航海に来た、のちの米国海軍大将ニミッツ)は見透かしていました。

日清・日露戦争以来の伝統的先制攻撃そしてその後の素早い戦場離脱(逃走)です。真珠湾攻撃しかり、珊瑚海海戦しかり、南太平洋海戦しかり、サボ島沖夜戦しかり。勝っているのに、追撃しないで逃げ出してしまうのです。

貧乏国の悲しさ、艦隊保全の名目のもとに、戦術的に勝ったから、いくさという恐怖の場から逃走したくなるのでしょう。

繰り返し繰り返し、反復して同じことを徹底的にやり通すことに、不向きな国民性であることは間違いありません。

体力的にも精神的にも農耕民族が過半数を占めている我ら日本人。アメリカン・フットボールの、執拗な繰り返しと強者有利のルールと、一回限りの勝負の日本の棒倒しのルールの違いを比較してみてください。

これらはそれぞれ米・日軍人の海軍兵学校・陸軍士官学校の正式科目だったのです。

本年入社した新人の研修のため、ある蕎麦屋へ昼食を兼ねていきました。総床面積15坪ほどの店には、お運びの中高年女性ウエイトレスが4人、厨房には男性1人女性1人がいました。

働いている皆さんは、昼食時の混雑に忙しく動き回っていました。私たちが入店してから、昼食を終えて店外に出るまでの客数は25人でした。

「いかがでしたか?今の店の経営的側面からの感想は」という質問に対し、さまざまな答えが出ましたがここではその詳細に触れないでおきます。本文の目的からずれますから。

ただ、客の全員が980円のそばランチしか頼んでないとの指摘もありました。この研修小遠足で私が言いたかったことは、過剰人員による経営は行き詰るということです。いくら原価率が低い蕎麦ではあっても(5%ぐらいか)。

もうひとつ例をあげれば、弊社の隣にあるファミリーレストランのウエイトレスの人員過剰です。

私が印象に残ったチューリッヒの空港にあるレストランを例に挙げますと、30坪ぐらいの軽食レストランはウエイトレス1人、バーテン1人で賄っています。常時20人ちかくいるお客はもちろん待たされます。一様にブーブー言いますが、「ソリーソリー、モメント」と微笑みながらあしらいます。

肩からは、たすき掛けに大きな金銭バッグをかけ、注文を運ぶと同時に代金を受け取ります。レジに足を運ぶ動線の無駄を省いているのです。背は高いが(歩幅が大きい)、痩せた中年の女性ウエイトレスでした。

隣店にとってウエイトレスの人員を半減することは、困難かもしれません。それだけの体力のある女性をパートで雇えるかとか種々のポイントがあります。でもそれをクリアーしなければ、時代に耐える組織にはなりません。

他社の組織の問題点はよくわかるものです。問題はわが社のことです。

今後の見通しとわが社員がなすべきこと
 アメリカという「借金して豪遊する大旦那」が帰ってくることは、あと30年ほどは望めません。この事実を冷厳に受け止めて、対処していかねば路頭に迷うことになります。(時代を画した一つの市場が崩壊すると、再び復活するまでワン・ジェネレーション=一世代=30年を要するのは経験的・歴史的事実です。漢字の世は三十の意です)  現下のところ、政府の大判振る舞いの貸出政策により、短期的に金余り現象が起きています。世界各国の株式市場は上昇し、円高により海外旅行者は増加の勢いです。

 これらはみな、定年退職者等によりもたらされた砂上の楼閣にすぎません。すぐにでも吹き飛ばされる性質のものです。

 金融バブルというか、インチキ証券を流通させることにより、巻き起こしてきた強欲資本主義の破綻を食い止めるために、新たなバブルを引き起こす道を先進20カ国会議は推進しているようです。

 仮にそれが功を奏したとしても、バブルである以上また破綻するのは当然の帰結であります。むしろ一つのバブル発生から破裂までのインターバルは短くなりつつあるようです。

 「伸びんと欲すれば深く根を張らざるべからず。高く翔ばんと欲すれば深く学ばざるべからず」とは大隈重信の言葉です。(これは早稲田大学人間科学部キャンパスにあるペガサス像に刻まれています)  社員の皆さんに期待するのは、自らの頭で考えることです。

 現場にいる皆さんが、日常勤務の疑問・不自由にたいして創意工夫すれば、新商品・新技術はいくらでも産み出すことができます。

 それこそわが社の新商品となっていくでしょう。