日本の十年後の期待できる可能性

 マスコミは暗いことばかり書き連ねる。自虐的にペシミスティックな論調で、悲観的な予想で悲壮感を煽る(あおる)。との批判をいただくことがあります。
「批判ばかりしていないで、どうすりゃよいのか処方箋を出してみろ!」
とのご指摘に答えたのがこの章です。

中産階級の没落待望論
 「人々が快適な環境の中で、ただ居心地よく暮らしているだけでは国の発展は無い」「中産階級が揺らぎ、安定的な雇用に不安を感じ、所得の格差が拡大する」「国民の大多数が現状に満足していないという状態が長続きしていないと国全体の活力は生まれない」(若林英四氏による。以下も同じ)「明治維新もフランス革命も中産階級が没落することが引き金となって勃発した」「レーガン政権に端を発したアメリカの『革命』も、中産階級の没落が引き金となったのである」
この件は次号以降にじっくりと取り上げていきます。

 漠然とした、未だ姿も見ていない、ハイテク産業への期待や新産業待望論では、庶民が安心して消費に金を使うことは難しいです。  インフレ待望論では、一時的な問題先送り策の批判は免れません。インフレの影響をまともに食らうのは年金生活者・社会的弱者です。そして年金生活者が大幅に増大してくることは人口構成上からも必至です。

移民受け入れ 帰化人
 識者が日本の未来に悲観的な理由のひとつに、出生率の低下があげられます。いかなる統計も、2010年を待たずして日本の人口はピークを打つとしています。これはかなり確率の高い近未来でしょう。したがって、土地は余り、地価は下がり続ける。「世界屈指の老齢人口を少なくなっていく若者が負担しなければならない」「すべての産業で需要減少が起き、ただでさえ供給過剰といわれている日本の産業はますます衰退していく」といったまことしやかな悲観論が横行しています。十年後の日本の姿がどうなっているかは誰にもわかるはずがありません。具体的なことを用いて、予防的な対策を講ずるとすると、外国人の移民を受け入れるということでしょう。

 それには日本経済がもっと落ち込んで、時間が窮乏化の道をひた進む状況になるまで、時間を必要とするでしょうが。日本には歴史的に見ても、帰化人の伝統もありました。日本の潜在成長率を上げるためにも考慮すべき問題です。移民を受け入れて人口二億人を目指すこととなると、一転して土地不足、住宅不足、食料をはじめとするすべての物資が供給力不足になります。校舎も不足する事態になるでしょう。

 移民労働者に雇用保険、医療保険、年金加入を義務付けることによって、これらの問題は解決し、所得税・消費税の大幅な増収も可能となるでしょう。

雑種強勢

 移民受け入れのもうひとつの大きなメリットは雑種強勢ということです。ベトナム系日本人、インドネシア系日本人、中国系日本人、フイリピン系日本人、中国系日本人、韓国系日本人等々が織り成す日本社会は、文化的にも文明的にも爆発的な飛躍の期待をもたらします。サラブレッドという英語は純血種という意味なのですが、サラブレッドは馬の中でも完全な雑種であることは皆様ご承知の通りであります。サラブレッドは雑種であるが故に強いわけです。イギリス貴族は、この馬を自分たちだけのゲームの駒にしょうと考えて血統管理をしたのです。いくつかの種の強いところを取り合わせて出来上がったのがそもそものサラブレッドでした。「血縁的に遠い族同士を掛け合わせてできた固体には、双方の族のいずれかの長所が導入され、その個体の能力は高まる」というのが遺伝学の用語でいうところの雑種強勢であります。

 アメリカはこの十年の間に1,000万人以上の移民を受け入れています。平均年齢の引き下げを通じて老齢年金の負担を軽くしています。ローコストな労働力の供給を達成し、一方では新しいベンチャービジネスマンを多数輩出しています。アメリカの一流大学でトップクラスの成績を修めているアジア系の学生は、移民の子であるのは周知の事実です。

 十年後には移民の受け入れが始まるでしよう。それは物質的には豊富だが、物騒な国になることも意味します。好むと好まざるとにかかわらず、今ぐらいの生活水準を維持するために、日本国民はこの道を選ぶ確率が高いと考えます。